作曲者自身による楽曲解説
ふうげつ どうてん
風月同天(2026) 浦 雄一 飛鳥時代から奈良時代初期にかけての皇族であった長屋王(676 年または 684 年-729 年)は、仏教の教えを通して平和を実現しようと願い、高名な僧侶を日本に派遣してもら うため、千着の袈裟を唐に贈りました。それぞれの袈裟には、以下の漢詩が刺繍されてい たと言われています。 (現代日本語訳監修: 李 軍 宮崎大学准教授) 山川異域 山や川は国によって異なりますが(日本と中国は離れていますが)、 風月同天 風も月も同じ空の下にあります(自然の風物は同じです) 。 諸仏子寄 同じ仏教徒である皆様に(この袈裟を)お贈りします。 共結来縁 未来へと続くご縁を結べることを願っております。 この詩に感銘を受けた鑑真(688 年頃-763 年)は、長屋王の死後である 753 年、視力を 失いながらも 6 度目の挑戦で日本にたどり着き、759 年に唐招提寺を開山しました。 本作は、数種類の五音音階を用いて作曲された、小規模な交響詩です。冒頭のファゴッ トソロは、詩吟の旋律を模倣しています。終結部では、上記の漢詩と相通ずる旧約聖書の 一節「見よ、兄弟が共に座っている。なんという恵み、なんという喜び。 」 (詩篇 133:1) に基づいた旋律が、月明かりを思わせる背景の中で奏でられます。 初演は、2026 年 2 月 21 日、米国・アイオワ州アイオワシティにおいて、作曲者自身の 指揮、アイオワ大学コンサートバンドにより行われました。 尚、冒頭のソロについて、やむを得ない事情がある場合は、その一部または全部を省略 して演奏することを許可します。