PAPER
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HELLO NEW ME REGENERATION 2 10 Issue December 2024
“新しいわたし”に忍ばせた 未来と希望の気配
森の再生、関係性の再生 「みんなの森」


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HELLO NEW ME REGENERATION 2 10 Issue December 2024
“新しいわたし”に忍ばせた 未来と希望の気配
森の再生、関係性の再生 「みんなの森」


“ HELLO NEW ME ”の中に 忍ばせた、未来の気配
大切な人へ。頑張った自分へ。
1 年の終わりのホリデーに、
SHIRO が目指す未来を アドベントカレンダーに忍ばせました。
価値ある素材や資材を活かし、 森のエッセンスを散りばめ、 ものづくりを行うブランドとしての プライドを込めています。
Photographs: KEITA SAWA, SOPHIE ISOGAI & FRANCISCA DERQUI, KENGO SONE
Text: SHINTARO KUZUHARA
SHIROらしいホリデーの在り方
SHIRO が続けてきた自然に根ざしたものづくり、コロナ禍以降の森との 出会い、北欧やイタリアへの旅。さまざまな人と出会って話し、目の前で起 きていることをよく観察し、考える。今、どうしても感じてしまうのは、いろ いろなことが「行き過ぎているんじゃないか」という違和感です。売り買い の仕組みはたくさんありますが、捨てる量を抑えることや、リユースする仕 組みは整っていません。その結果、消費しきれない数の製品をつくり、売 るためにコストを費やし、どれだけ販売しても余ってしまう量をつくっている ので、最後にはどうしても捨てられてしまう。販売期間が限定されている「ホ リデー」が、その一端を担っていることは否定できません。
SHIRO がホリデーにどんな製品を出すのか、お客様は毎年楽しみにし てくださっていると思います。その一方で、ホリデーの在り方がこれまでと 同じで良いとも思えません。 SHIRO のホリデーはあるべき姿に向かい、変 わり続けます。もちろん、あくまでもSHIROらしく、美しい在り方のままで。 つくりすぎることも、捨てることもなく、みんなが参加できる。人々の行動 が自然と変わり、未来を変えていけるようなホリデーを。未来への気配は 今年のホリデーに忍ばせてあります。来年はさらに新しいホリデーをお届 けできるように、すでに準備も始めています。
わたしたちの周りは可能性で溢れている 新しくつくらない、新たなものづくり
自然の恵みを最後の一滴まで余すことなく使っているブランドだ からこそ、使われなくなったすべての資源を活かしたい。その想い から、 2024 年 1 月より今あるものの魅力を最大限に引き出すものづ くりをスタートしました。香りのリニューアルなどの理由で SHIRO の工場で眠っていた香料と容器を使い、限定フレグランス「 ZERO COLLECTION FRAGRANCE 」が誕生。容器に元々印字されていた、 香り名や成分表示の部分だけを覆うようにラベルシールを貼り、紙 資源の利用を最小限に抑えるパッケージデザインに。
無限にある香料の中から香りをつくる通常のフレグランスづくりと は異なり、今あるものを組み合わせることで、自分たちが毎日使い たくなるアイテムを生み出しました。


Calendar 2024
ZERO FAVOURITE FIG
EAU DE PARFUM
ゼロフェイヴァリットフィグ オードパルファン
深みある甘さにみずみずしい果実をプラス 今年のホリデーだけの「 ZERO COLLECTION 」
2024年のアドベントカレンダー限定でつくったのは、この冬 にまとってほしい香り。深みある甘さの「パリジェンヌ フェ イヴァリット」に、過去の限定パフューム「フェイヴァリット ドレス」、そしてみずみずしい「フィグ」などを組み合わせた フレグランス。香りを詰め込んだガラス容器は、メーカーが 保管していた軽微不良のものにラベルを巻いています。
Calendar 2024 1 Sun 7 Sat
ZERO FAVOURITE FIG OIL IN BODY SCRUB ゼロフェイヴァリットフィグ オイルインボディスクラブ
チェリーやフィグなどの果実と花々が香る 甘くロマンチックな贅沢ボディケア
深みある甘さと、果実のみずみずしさを感じるゼロフェイヴァ リットフィグの香りを存分に楽しめる製品って何だろう?と 考えて生まれたボディケアアイテム。冬の肌を想い、角質ケ アをしながら流した後もしっとり保湿してくれて、眠りにつ くまでの時間もほのかに香るアイテムに仕上げました。ラベ ルには香りをイメージしたカラーを採用しています。


北海道長沼町に建てた一棟貸しの宿 MAISON SHIRO 。 SHIRO の製品が誕生するきっかけは、畑や海を訪れ、素 材に触れて、香りを嗅ぎ、口にして、生産者である農家 や漁師と出会って彼らの想いを聞くことから。そんなも のづくりと同じようにMAISON SHIROも、木こりの案内 で森を歩き、森の未来を考えて間伐される木々の中から 柱や壁に使う材を選び、どこへ使うか決めていきました。 規格外の野菜が不格好でも栄養があって美味しく食べら れるように、木材に節や割れがあっても、石材の大きさ や色が異なっていても立派に機能する。そしてそんな材 こそ唯一無二の個性と美しさがあるのです。
宿泊棟の隣には、近隣で採れたり、生産者から届いた りする自然素材を蒸留する「シロラボラトリー」があります。 フレッシュな枝葉や、森に自生する素材を蒸留し、製品 に使用。暮らしながら、 SHIRO のものづくりの気配を感 じていただけます。
Advent Calendar 2024
SPICE OF LIFE
SHAMPOO & CONDITIONER
スパイス オブ ライフ シャンプー & コンディショナー
髪も心も満たされる、自然素材と香りが主役の SHIROならではのヘアケア製品 SHIROの暮らしがここにある 森の都合で建てた家
アドベントカレンダーでは、 MAISON SHIROのアメニティを ミニサイズでご用意。パフュームシリーズの豊かな香りを満 喫できる製品をつくる中で、素材の恵みを使って保湿効果を 加えたいと考えました。そして、水の代わりにシロラボラト リーで蒸留した白樺蒸留水を合わせることで、「スパイス オ ブ ライフ」の香りを引き立て、泡立ち良くしっかり保湿して くれるシャンプーと、アロエとシアバターとともに濃密な潤 いを閉じ込めるコンディショナーが誕生しました。


Calendar 2024
Guasha カッサ
森の未来を考えて伐った木々を余すことなく使う
建築に使った木々の端材たちは、ものづくりやお店づくりな どさまざまな場面で活かすことができるかもしれないと考え、 処分することなく大切に保管していました。自分たちが本当 に欲しいものを考えたときに、1 年間の疲れを癒やし明日も 頑張れるよう、セルフマッサージをするカッサをつくろうと 思いました。ローレルの頃から一緒にお店づくりをしている、 砂川の三共建具工業の水島さんが、一つひとつ手作業で、間 伐したトドマツのぬくもりを感じられるように仕上げてくれ ました。
リサイクルからリユースが 日常になるために
日常生活を過ごす中、一人でも多くの人が、リサイクルからリユース へ自身のアクションを切り替えれば、地球にかかる環境負荷のエネルギ ーは格段に減ります。環境負荷が減れば、毎日はもっと過ごしやすくなり、 動植物の命も紡がれていくはず。 SHIRO はこの先の未来もずっと、地球 上の命が絶えず誕生し続ける世界を望んでいます。そのために今、私た ちができること。
多くの素材を使ったプロダクトは、単一素材でつくられた場合と比べ、 リサイクルしづらいという現実があります。しかしすでに世の中は、多素 材プロダクトで溢れています。ですから「リサイクル」ではなく、プロダ クトの形をそのまま使う「リユース」へとシフトすることが重要です。また、 単一素材でつくられているガラスはリユースのハードルも比較的低く、環 境負荷を抑える容器として注目。 SHIRO はこれまで何度も容器をリユー スできないかとチャレンジしてきましたが、多くの壁があり、なかなか実 現できませんでした。しかし、高度な洗びん技術を持つ老舗企業とのタッ グにより使用済みのガラス容器を洗浄し、香りと油分を取り除くことに成 功。じゃあ、 SHIRO の使用済みガラス容器だけを集めればいいの? 答え はノーでした。


「 SHIRO with PASSTO」が 伝えたい未来
ECOMMIT はPASSTOという資源循環サービスで衣類回 収の取り組みをされています。その活動を知り、廃棄される 衣類を 1 枚でも減らし、リユースさせることが未来の地球の ために重要なアクションだと考え、ガラス容器と一緒に衣 類も回収してきました。 2024 年 11 月、渋谷 PARCO で行っ たPOP UP STORE「 SHIRO with PASSTO 」では、回収し た容器を再使用してつくられた「 ZERO COLLECTION 」 より、ゼロホワイトフィグとゼロムスクサボンの 2 種の香りを 販売しました。また、回収した衣類の中から、「この服が着 たい」と思っていただける魅力的なリユースの衣類をセレク ト。プロダクトの新しい価値や魅力を創造するPOP UP STORE では、 SHIRO のお客様はもちろん、今まで SHIRO と出会うことがなかった方々にもお買い求めいただけました。
SHIRO のすべての店舗では引き続き容器の回収を行い ます。使い終わった SHIRO のガラス容器がございましたら、 ぜひ店頭へお持ちください。
極力バージン材を使わず
すべての価値を見つめ直すお店づくり
スクラップアンドビルドを繰り返す建築が当たり前になりつつ ある今だからこそ、新しくオープンするお店もリニューアルする お店も、今ある資源の価値を見つめ直しながら再構築しています。 例えば、既存什器の表層替えのみを施してそのまま使用したり、 販売できない製品容器を砕いて左官材に混ぜたり、不要になっ た什器は別店舗の什器として再活用するなど。生まれ変わった お店へ来てくださるお客様に、もっとワクワクして欲しいという 想いでデザインしてきました。
そして、 SHIRO にとっては当たり前であるこのお店づくりに、 ルミネエスト新宿店のリニューアル時にはお客様にご参加いた だきました。既存の床をペイントするという施工の一部を開き、 一緒にワークショップを行ったのです。この新たな挑戦が参加 してくださった方々の心に残り、何かの気づきになることを願って。

15 年目の宣言
ブランド誕生から15 周年を迎えた2024 年。私たちは「本質的な循環の ために廃棄物ゼロを目指す」という「 15 年目の宣言」を表明しました。製 品がつくり手から買い手へと渡り、使用後には廃棄されるという流れを変え るための起点となるようフォーカスしてきたのは、ものづくりとお店づくりの 2 つです。
・限りある素材や資材を余すことなく使い、 資源を大切にする「ものづくり」
・極力バージン材を使わず、価値ある端材や 廃材を活かす「お店づくり」
そして今年の SHIRO は、ものづくりやお店づくりの枠を超え、学びの場 をつくったり、ファッションショーを行ったり、ともに歩む仲間がたくさん増 えました。みんなの工場を設計してくれた建築家・アリイイリエアーキテクツ。 彼らの提案書には「工場を開く」というキーワードが書かれていました。そ のアイデアをどのように実現するかを考え抜いたら、 工場とショップを隔てる壁がガラスにな りました。 MAISON SHIRO で取り組んだ端材まで使い 切る木の使い方も、できる だけ廃棄しないお店づくり も、現在実験を進めている ガラス容器の回収・洗浄・ 再使用する仕組みも、全て 開いていくつもりです。

工場を開く
工場の一部ではなく、製造ライン全体を見学できるようにする。 裏のない製造工程へのSHIROの意思と誇りを、建築の在り方で示 す。それは、工場+付帯施設という構図ではなく、工場自体を開 くということ。ものづくりのプロセスを開放することで、その場 を一企業の製造所から、地域の学びの場へ変容させます。
15 年後の世界を想像してみましょう。廃棄物ゼロは当たり前になり、「ゴ ミ箱」がなくなっているかもしれません。あらゆるものは「資源箱」に分 けられ、野菜を育てる肥料になったり、新しい製品のパッケージになったり、 次の役割が待っているのです。そのとき店舗は販売拠点にとどまらず、さま ざまな資源を循環させる中心地として役目を果たすでしょう。 SHIRO はコス メティックブランドの枠を超え、さまざまな領域にまたがり、社会の循環を 促す存在になっているかもしれません。
もし「20 年目の宣言」、「 30 年目の宣言」をするなら、どんな内容になる のでしょう? 例えば、「再生」をテーマにしているかもしれません。 SHIRO のものづくりと森づくりがより深く繋がり、 SHIRO の製品をつくればつくる だけ森が育っていく。そのころには、今よりもっと多くの仲間がいて、森だ けでなく、海や川、街などさまざまな再生をサポートしていけたら素敵ですね。 とはいえ、そんなポジティブな未来が来るかどうかは誰にもわかりません。 生産者の声を聞けば、気候変動の影響で作物の収穫量が減ったり、品質 が悪くなったりするという話も耳にします。夏の暑さが過酷になっている実 感を、多くの人が抱いているでしょう。 100 年後を生きる世代にどんなバト ンを渡せるのか、皆さんと一緒に考えていけたら嬉しいです。

さまざまなプロセスを開く ポッドキャストがスタート
毎週日曜日に配信している「 TABI SHIRO」 に続き、社会課題をビジネスで解決するドキ ュメンタリー番組「あいだのハナシ」の配信 がスタート。北海道砂川市の砂川パークホテ ルのリニューアルプロジェクトを題材に、さ まざまな社会課題に向き合うプロセス、“あ いだ”を現在進行形でお伝えしていきます。 理想と現実、都市と地方、民間と行政など、 さまざまな“あいだ”をキーワードに、悩み ながら模索する過程もすべて開いてお届けし ますので、聴いてみてください。

自然の恵みに包まれて 香りの余韻にひたる幸せ
SHIRO の暮らしを体感できる一棟貸しの宿 MAISON SHIRO で、アメニティとしてご用 意している「SPICE OF LIFE シャンプー」、 「SPICE OF LIFE コンディショナー」、「FREESIA MIST ボディソープ」、「SPICE OF LIFE クレ イハンドソープ」が定番製品として登場。泡 立てたり、髪につけたりする瞬間、バスルー ムいっぱいに SHIRO PERFUME の豊かな香 りが広がり、幸せな気分に満たされます。毎 日のルーティンをより豊かにするアイテムた ちを手に取ってみてください。

個性あふれる 6 種の香りで 手肌をケアする美容液
世界各国のパフューマーの記憶から生まれた ストーリーが、ドラマティックに香る SHIRO PERFUME 。その香りを日常生活でもっと気 軽に楽しんでほしいという想いから、定番製 品「ハンド美容液」が登場しました。リッチ な潤いと美しい香り立ちの両立を目指して試 作を重ね、保湿アイテムながら、練り香水の ような感覚でお使いいただけます。FREESIA MIST をはじめとする全 6 種の香りを満喫で きるハンド美容液はご自身用にはもちろん、 気持ちを伝えるギフトにもおすすめです。

2025 年春オープン予定 薪火レストラン(仮称)
みんなの工場の敷地内に、食と空間の感動体 験を創造するレストランをオープンします。 円錐形の屋根がシンボリックなレストランは、 薪火でつくった同じ料理を食べ、共に時間を 過ごし、新しい“えん”が紡ぎ出される空間 を目指します。建物には木こりと山に入り選 んだ道産材を用い、料理には工場の畑で育て た野菜や、道内産の食材を使います。そして 今年の冬、工場ではものづくりワークショッ プやかまくらづくりなどを予定していますの で、ぜひお越しください。

森林がつくりだす フレグランスポプリ
「フレグランスポプリ」が今年の冬も数量限 定で登場します。SHIRO が森で出会った素 材は、森林が生み出す澄んだ空気、木々の間 から差し込む木漏れ日、美しい落ち葉の色彩、 枯葉を踏みしめる音など 人の手だけでは つくり出せない、自然が生み出した美しさで した。拾い集めた落ち葉や木の実に、香りを まとわせたらフレグランスポプリの完成。自 然の恵みをいただきながら、今あるものを使 い、香りも見た目も楽しめる森からの贈り物 をお届けします。

プライベート空間で行う パーソナルカウンセリング
SHIRO の店舗にて、アドバイザーが直接お 話を伺いながら、お客様一人ひとりに寄り添 うパーソナルカウンセリングを行っています。 「店内の混雑状況を気にせず、ゆっくり製品 を選びたい」、「初めて SHIRO を使うので、 時間をかけながら製品について詳しく知りた い」、「特別な空間で落ち着いて個別カウンセ リングを受けたい」という方におすすめです。 現在、表参道本店にて最大 90 分間で受け付 けており、公式オンラインストアからご予約 いただけます。



自ら再生する力を支え、見守る SHIRO が はじめる「 みんなの森」 その場所を壊さなければ、 SHIRO は生まれなかった 。 私たちと切っても切り離せないとある森が、 北海道砂川市にあります。一度は壊してしまった森は今、 自らの力で再生しようとしている。これからはじまる 「みんなの森」誕生のストーリーをお届けします。
ただいま準備中

枯れた草木の合間を縫い、新しい命が芽吹いている。
20 年間手つかずだった「みんなの森」
札幌でこの冬初めて積雪が観測された 11 月上旬のある寒い日、SHIRO
PAPER 編集部は、取材のために車を走らせました。鮮やかな赤や黄色に 紅葉した森には白い雪が降り積もり、昨日までとは全く異なる景色が広が ります。これだけ広大な風景を一夜にして変えるのが自然の力。人間には 不可能です。秋から冬へと移り変わるこの時期だけの自然の美しさを堪能 しながら向かったのは、北海道砂川市の山間エリア。
高速道路を降り、収穫を終えた畑の間を駆け抜けると、突然視界が開け ました。谷のように凹んだ大地に若い白樺が立ち並び、新しい森が育って います。池や湿地もあり、鹿の角や小動物の食べ残しなど動物が棲んでい る痕跡も見つけることができました。ここは、SHIRO が新しく始める「み んなの森」となる予定の場所です。鳥や動物、植物を観察する小屋、採取 した植物の加工場、見晴らし台などを整備し、自然に根ざした農業や生き 方を伝える開かれた森にするため、準備を進めています。

雪が舞う中、室松玲子さんにお話を伺う。
この森を眺めながらお話を伺ったのは、SHIRO の前身であるローレル 創業者の故・室松敏雄さんの妻で、ローレル時代に今井と一緒に働いてい た室松玲子さんです。
「この土地は、ローレル時代に室松敏雄が購入したもので、約 20 年間、手 をつけられずにいました。この場所では8 年間、山から土を削り取り、他 の場所へ運び出し続けていたのです。今でも残る斜面の痛々しい景色は、 その痕跡です」
当時ローレルはハーブや石けんだけでなく、ラベンダーのボディソープ やバスソルトなど北海道のお土産品も製造していました。北海道土産とい っても生産地が他県だったり、製造元が北海道の会社ではないことが珍し くなかった時代に、ローレルは北海道の素材にこだわり、砂川で製造して いました。しかし、赤字経営が続き、会社の経営を支えるために当時社長 であった室松敏雄さんは奔走していました。その一つが砂利の採掘販売で す。ローレルが所有または借用している土地から砂利を掘り、その埋め戻 しのために土を掘っていた場所が、「みんなの森」の予定地なのです。こ の土地の生態系を壊したのはローレルです。しかし、そうしなければロー レルは倒産するかもしれなかった。そうなれば SHIRO も誕生していなか ったのです。
その後、入浴剤やスキンケア製品の OEM 事業が軌道に乗り始め、砂利 採掘は終了。室松さんは社長の座を今井に譲りローレルを退き、土地を会 社から引き継ぎました。
20 年前と今をつないだ
ある出来事
就職説明会で出会った室松敏雄さんの人柄に惹かれて新卒で入社し、室 松さんから何を大切にして働くかを学び、二人で飛び込み営業をしながら 販路を開拓してきた今井。その信頼関係があったからこそ室松さんは、当 時 26 歳だった若い今井にローレルを託したのでしょう。今、今井が自然 素材にこだわり、生産者に近いところで製品をつくっているのも室松さん の影響です。
一緒に働いていた時期は、尊重し合い、大きなチャレンジを続けていた 二人ですが、室松さんが会社を離れて以降は絶縁状態になってしまいまし た。shiro から SHIRO へとブランドが発展するに従い、室松さんの気持ち はほぐれていきましたが、再び話し合うことがないまま室松さんは癌で 亡くなってしまいます。それは、砂川にみんなの工場がオープンしてしば らくしたあとのことでした。そんなある日、森に通い始めた今井に、玲子 さんから連絡があったのです。
「実は、20 年間手つかずの森があるんです。もし今井さんが森に興味を持 っているなら、紹介したい。一度は壊れてしまった生態系が、手つかずの 間に戻ってきているんです」
室松さんが土地を所有し、砂利の採掘事業をしていたことなどすっかり 忘れていた今井。このお誘いで、初めて土地を見に行きます。
No man is an island, Entire of itself; Every man is a piece of the continent, A part of the main.
If a clod be washed away by the sea, Europe is the less,
As well as if a promontory were:
As well as if a manor of thy friend's Or of thine own were.
Any man's death diminishes me, Because I am involved in mankind. And therefore never send to know for whom the bell tolls; It tolls for thee.

秋に現地調査しに行った際には、一面がススキに覆われていた。
「驚きました。ここには可能性しかない。土地を変形させるほど自然に手 を加えてしまった事実は本当に痛ましいことだけど、この土地がなければ SHIRO は生まれなかったのも事実。だからこそ、この場所を森として開 き、自然との共生を伝える場にしたいと思いました。現状では美しい森と は言えません。でも、自然に森に戻ろうとする力を感じます。その力を支 えたい。50 年後にはきっと豊かな森に育つはず」
いろいろな森を見た今井ですが、破壊されたあと自然の力で再生中の森 が身近にあったことを知り、ここを SHIRO として引き継ぐことを決めま した。
さらに、玲子さんと数十年ぶりに話す中で、室松さんが生前に語ってい た夢を思い出します。ヨーロッパを訪れて体験した“ハーブが身近にある 生活”を日本に定着させようとし、東南アジアからの研修生へ自然に根ざ した有機農法を伝え自立を支援。また、室松さんはローレルを辞めた後、 玲子さんとオーストラリアで数年間生活し、「自然に関わる仕事がしたい」 という想いを強めて帰国したそうです。「みんなの森」となる予定のこの 土地で農業を始めようとしていました。彼が残してくれた山と森から、新 しい物語が始まろうとしています。
それ自体で完結した存在ではない。人は誰もが孤立した島ではなく、 ヨーロッパはそれだけ小さくなる。もし土壌が海に流されれば、すべての人は大陸の一部であり、全体の一部である。あるいはあなた自身の土地が失われたのと同じだ。それは岬が失われたのと同様に、あなたの友人の土地が、 なぜなら、私は人類の一員だからである。誰かの死は私の一部を失った気にさせる。それゆえ問うなかれ。それは、あなた自身のために鳴っているのだから。誰のために鐘は鳴っているのか、と。ジョン・ダン 『危篤時の祈り』より
John Donne Devotions upon Emergent Occasions
手つかずの森の大先輩 北海道の原生林へ
降りやまない雪の中、編集部はさらに北へ向かいます。目的地は北海道 大学が管理する「雨龍研究林」です。ここには、人の手が入った形跡のな い「原生林」が広がります。私たちが目にする多くの森は、人工的に植樹 された単一の樹種がまっすぐに並んで生え、美しく見えるのですが、北海 道の生態系としては不自然です。一方、自然が生んだ森は、針葉樹と広葉 樹が混在し多様な生態系が保たれます。「みんなの森」の予定地は、まだ 短い期間ではありますが、人が手を入れず自然発生的に森が育ち始めてい ます。現状では荒れ地に見えるかもしれませんが、若い森の誕生なのです。
自然の意思に任せたら、どんな森ができるのかを学ぶため、雨龍研究林を 訪れました。
この森を管理する北海道大学の小林真博士を先頭に、原生林の中を歩き ます。足元の土は耕したばかりの畑のようにフカフカです。寒さの厳しい 北方の森では、土の中の微生物が少なく、落ち葉などが分解されすぎるこ となく積み重なっていきます。こうしたフカフカの土は、木よりも多くの 炭素(二酸化炭素の材料になってしまうもの)を蓄えているそうです。そ んな話をしながら、ある場所で小林さんが立ち止まりました。
「この倒れた木を見てください。何本も木の赤ちゃんが生えていますね。 これは『倒木更新』という現象です。北方の森では、雪に覆われてしまう 土の上よりも倒木のほうが木を育てるのに適しているのです。この森では なんと 9 割の木が倒木更新によって育っています。つまりこの森は、枯 れていく木があって初めて新しい木が生まれるんです」

柔らかい土の上をどんどん歩く。見学しやすいように 北大の職員の皆さんが整備してくれている。
倒れた木から育つ、新しい木。この中のいくつかが育ち、数十年後には大きな木になっているはず。


Uryu Experimental Forest 1901 年に創設された、北海道大学研究林の中で も最も歴史の長い研究林。総面積は約 2 万ヘクタ ール。寒暖差の激しい多雪地で、夏期は 30 ℃を 超えるが、冬期は -35 ℃にもなり、最大積雪深は 200cmを超える。森林科学、生態学、環境科学 などさまざまな学術研究や学生実習の場として利 用されている。 雨龍研究林
森林管理の現場では、倒木は片付けられるのが通常です。倒れていると 重機が通るのを妨げてしまうからです。しかし、倒木も森の生態系の一部 なのです。森に入るとついつい高くそびえ立つ木につられて空を見上げて しまいますが、足元でも、さらには、土の中でもさまざまなことが関わり 合って、森ができています。それがよくわかる場所として、小林さんは大 きな常緑針葉樹の根元に案内してくれました。
常緑針葉樹とは、1 年を通して葉を落とさない針葉樹のこと。クリスマ スツリーとして使われるモミの木もその一つです。細長くて硬い針のよう な形をした葉は、蒸発する水分を抑える役割があり、厳しい寒さに加えて 乾燥している環境でも生きていくことができます。
多くの北海道の森は、笹が地面をくまなく覆い日光を遮ってしまうので、 背の低い植物や幼木は成長できません。しかし、1 年を通じて葉が落ちな い常緑針葉樹の下では、限られた太陽光しか届かないため明るい場所を好 む笹が生えないのです。太陽光の影響を受けないということは、温度や湿 度が変化しづらいということでもあります。その安定した環境を好むさま ざまな種類の植物が集まります。つまり、常緑針葉樹は森の多様性を守っ ているのです。
「この森だけでなく、世界中で常緑針葉樹が減少しています。多くの研究 者が原因を探っていますが、私の調査では気温上昇の影響で夏がより乾燥 し、常緑針葉樹が枯れやすくなっている様子が見られます」
雨龍研究林は北緯44度、北欧やロシア、カナダなどの北方に広がる森 の中では最も南に位置します。つまり、地球温暖化による北方の森の変化 が最も早く現れる地域です。世界に広がる北方の森の未来が、この先どう なるかを先んじて示してくれる森でもあります。

すべて同じように見える針葉樹の葉だが、 樹種によって形が異なる。森には多様な植物が生きている。

北方の木といえば、この白樺を思い浮かべる人も多いのでは。 その美しい姿から、多くの芸術作品や文学のモチーフとなっている。
誰もが孤立した島ではなく
全体の一部である
森の中ではすべてが関係し合っており、少しでもバランスが崩れると大 きな影響が出てしまいます。北海道に広がる豊かな原生林でも、バランス が崩れている様子を知り、事の深刻さを実感した編集部。しかし、悪い発 見ばかりではありませんでした。小林さんは最後に、森の中でも白樺がた くさん立ち並ぶエリアに案内してくれました。
「白樺の種はとても軽く、遠くまで飛んでさまざまな場所で芽吹きます。 さらに白樺は成長も早いんです。山火事が起きたり、木を根こそぎ伐採し てしまったような場所にいち早く生えて、森をつくっていきます。北方で は、森の始まりは白樺がつくるんです」
ここで思い出してほしいのは、「みんなの森」の予定地の景色です。白 樺がたくさん生えていましたよね。白樺から森が始まり、葉が落ちて土を 豊かにし、枯れて倒れて、そこから新しい木が生まれる。こうして、さま ざまな要素が関係し合い、森が育っていくのです。
前のページの詩は、17 世紀のイギリスの詩人ジョン・ダンの作品の一部 です。ここに登場する「鐘」は、地域の誰かが亡くなったことを知らせる ために教会が鳴らしていたものです。「人は孤立した存在ではなく、関係 し合っている。だから、誰か一人の喪失は、自分自身を含む全体に影響を 及ぼす」ということを、この詩を通じて表現しました。
人も自然も、それぞれが関係し合っています。誰かの死から始まること もあれば、どこかの木が枯れて倒れることから始まることもあります。新 しく始まる「みんなの森」でどんな関係が生まれていくのか、SHIRO の お客様に広くお知らせできる日が楽しみでなりません。

2024 年 11 月、改装中のルミネエスト新宿店で開催した「床ペイントワークショップ」。子どもも大人も みんなで、自由に、楽しく、色を重ねていきました。ご参加くださった皆様、ありがとうございます。
北海道
SHIRO 砂川本店
SHIRO 札幌ステラプレイス店
関東
SHIRO 表参道本店
SHIRO BEAUTY 表参道本店
SHIRO 自由が丘店
SHIRO ルミネエスト新宿店
SHIRO 伊勢丹新宿店
SHIRO 丸ビル店
SHIRO 銀座三越店
北海道砂川市豊沼町 54-1 みんなの工場内
北海道札幌市中央区北 5 条西 2-5 JR タワー 札幌ステラプレイス センター B1
東京都渋谷区神宮前 5-2-7 2 F
東京都渋谷区神宮前 5-2-7 B1F
東京都目黒区自由が丘 2-9-14 アソルティ 1F B1 F
東京都新宿区新宿 3-38-1 ルミネエスト新宿 B1
東京都新宿区新宿 3-14-1 伊勢丹新宿店本館 1 階=化粧品
東京都千代田区丸の内 2-4-1 丸ビル B1F
東京都中央区銀座 4-6-16 銀座三越 地下 1 階 ギンザコスメワールド
SHIRO +Q(プラスク)ビューティー 東京都渋谷区渋谷 2-24-12 渋谷スクランブルスクエア
渋谷スクランブルスクエア店 ショップ&レストラン 6 階 SHIRO +Q(プラスク)ビューティー店
SHIRO 渋谷ヒカリエ ShinQs 店 東京都渋谷区渋谷 2-21-1 渋谷ヒカリエ ShinQs 1 F
SHIRO ルミネ池袋店 東京都豊島区西池袋 1-11-1 ルミネ池袋 B1
SHIRO 玉川髙島屋 S C 店 東京都世田谷区玉川 3-17-1 玉川髙島屋 S C 南館 1 F
SHIRO ルミネ北千住店 東京都足立区千住旭町 42-2 ルミネ北千住 3F
SHIRO ルミネ横浜店 神奈川県横浜市西区高島 2-16-1 ルミネ横浜 1F
SHIRO ルミネ大宮店 埼玉県さいたま市大宮区錦町 630 番地 ルミネ大宮店 ルミネ 2 3F
SHIRO/TIAT DUTY FREE BEAUTY 東京都大田区羽田空港 3-4-2 第 2 ターミナル 3 階 国際線出国エリア内
中部
SHIRO タカシマヤ ゲートタワーモール店 愛知県名古屋市中村区名駅 1-1-3 タカシマヤ ゲートタワーモール 6F
SHIRO ジェイアール名古屋タカシマヤ店 愛知県名古屋市中村区名駅 1-1-4 ジェイアール名古屋タカシマヤ 3F 化粧品
編集長:今井浩恵
Editor in Chief: Hiroe Imai
Creative Director: Shin Sasaki
エディター:葛原信太郎
Editor: Shintaro Kuzuhara
発行:株式会社シロ お問い合わせ
TEL: 0120-275-606
MAIL: info@shiro-shiro.jp
表紙写真:成尾和見 Cover Photograph: Masami Naruo
中国
SHIRO ミナモア広島店※ 広島県広島市南区松原町2番37号 ミナモア広島 2F
近畿
SHIRO 大丸京都店 京都府京都市下京区四条通高倉西入立売西町 79 大丸京都店 1F
SHIRO ルクア イーレ店 大阪府大阪市北区梅田 3-1-3 ルクア イーレ 2 F
SHIRO 阪急うめだ店 大阪府大阪市北区角田町 8-7 阪急うめだ本店 3F HANKYU BEAUTY
SHIRO 大丸心斎橋店 大阪府大阪市中央区心斎橋筋 1-7-1 大丸心斎橋店本館 1F
SHIRO 大阪タカシマヤ店 大阪府大阪市中央区難波 5-1-5 髙島屋 大阪店 1 階化粧品売場
SHIRO 大丸神戸店 兵庫県神戸市中央区明石町 40 番地 大丸神戸店 本館 1F 化粧品
九州
SHIRO 岩田屋店
福岡県福岡市中央区天神 2-5-35 岩田屋本店 本館 1 階=化粧品
SHIRO 博多阪急店 福岡県福岡市博多区博多駅中央街 1-1 博多阪急 1F 化粧品
Taiwan
SHIRO 新光三越台北信義新天地 A11 店 台灣台北市信義區松壽路 11 號 1 樓
London
SHIRO Monmouth Street Ground Floor, 63 Monmouth Street, London, WC2H 9DG, UK
※ 2025 年 3月24 日(月)オープン予定
発行人:福永敬弘 Publisher: Takahiro Fukunaga プロデューサー:伊藤亜由美(CREATIVE
Producer: Ayumi Ito
編集企画:野木村美里
Editorial Planning: Misato Nogimura
Public Relations: Maiko Sasaki
Thanks to: 小林真 / 坂井励 / 雨龍研究林の皆さん / 室松玲子 / 多木陽介