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SHIRO-Paper-Issue-6-202509

Page 1


PAPER

6 Issue September 2025

SHIRO PERFUME

香りに込めた想い パフューマーに聞きました

BUTTERBUR HOKKAIDO

12

MACHINAKA BUNKA GOYA 26

ラワンぶきの生産者を訪ねて 再び北海道足寄町へ

こんなに近くにありました みんなの居場所

SHIRO PERFUME

目に見えないからこそ 自分らしい美しさを表現できる もっと自由に、より自分らしく

テーマやコンセプトを設けずに、

パフューマーが自身のアイデンティティと向き合う。

それぞれの世界観を自由に表現し、

心を魅了する香りを生み出しています。

これまでの 12 種に加え、

新たに 7 つの香りがラインナップに加わりました。

パフューマーたちの個性に迫ります。

Text: SHIN SASAKI

Ryoko Akatsu, Japan

パフューマーは天職 どこにいても香りが気になる

パフューマーになろうと思ったきっかけを教えてください。 もともと香りに興味がありました。とにかく香りに反応していま したね。秋になると「どこで金木犀が香っているんだろう」とか、 自然の香りだけでなく、人や車、家の匂いなども記憶してました。

幼い頃からですか?

はい。自然志向の家庭で育ちました。母はヨガをしたり、断食 したり、変わり者だったと思います。祖父は生物の先生で、山 を一緒に歩いて植物を観察したり、押し花をつくったり、香り を嗅いだりしていました。口にも入れていたと思います。

お母さんとおじいちゃんの影響が大きそうですね。 そうですね。叔父の存在も影響しています。商社に勤めていて、 世界中を行き来していました。お土産の香水をみんなが使って いたから、当時の私にはよく分からなかったけれど、この世界 に入ってみると見たことがある香水がたくさんありました。

どうやってパフューマーに? パフューマーを目指していましたが、日本では仕事が見つかり ませんでした。フランスのグラースに調香師学校があると知り、 2 年間学びました。時間がたっぷりあったので、研修先の会社 にあった大きな冷蔵庫の中の大量の香水瓶を片っ端から嗅ぎ 続けました。この時期にいろいろなことを吸収した気がします。

香りのつくり方は学校で教えてくれるんですか? 基本的な組み合わせや骨格などは試行錯誤しながら学校で学 びます。しかし香水・香りそのもののつくり方、という意味では 直接という形ではあまり機会がありませんでした。美術館やバ レエ、オペラなど文化的な催しに触れる機会をたくさん与えて もらい、感性を培う時間が豊富にありました。

学生の頃は機会が用意されていたのですね。今はどうですか? 学校でそういうきっかけをもらうじゃないですか。あとパリにい たら、それだけで学びがいっぱいありますよね。そして今、日 本に帰ってきて、自分 1 人になっても、やっぱり続きますよね。

どうして続けられるんですか? え? 楽しいから。好きだからですかね。仕事のためにやってる わけではないと思います、私の場合。

何か社会に伝えたいメッセージがあれば教えてください。 先日、洗剤を開発するプロジェクトでベトナムの家庭を訪問しま した。ベトナムではまだ手洗いで洗濯している家庭が少なくあ りません。そしてほとんどの場合それは女性の仕事です。樽 の中でしゃがんで 1 時間洗濯するのは重労働です。そんなとき にふわーっといい香りが漂うと、きっと楽しくなるはず。家族を ケアする喜びを感じている女性たちに、さらに喜びを添えられ るのだとしたら、嬉しいです。

ご自身が産地を訪ねることはありますか? はい、機会があれば行くようにしています。友人の知り合いに オレンジフラワーを栽培している農家さんがいると聞き、行って きました。会社でも高知までゆずを見に行ってきました。私は SHIROの自然のものを素材にする考え方が好きです。自然に 力があるっていうのは、私もすごく信じていますから。

最後に、LIVING MY STORYがどんな香りか教えていただけま すか?

境界線のない心地よい香りです。SHIROの香りがユニセックス なのはもちろんわかっていましたが、最初は、アンバーっぽい ところなど、やや男性寄りだと感じていました。そのあたりの 偏りをなだらかにして仕上げました。

LIVING MY STORY

フレッシュな柑橘と甘美なフローラルの中に咲く、白い花 のオレンジフラワーがキーとなり、豊かなラベンダーやジ ャスミンなどの花々も束ねて、マンダリンの軽やかなフレ ッシュさが包み込みます。トップの明るい印象から始まり、 重厚感のあるバニラが香り立つ頃には、そのドラマティッ クな変化に心奪われるはず。 TOP: マンダリン、ブラックカラント MIDDLE: オレンジフラワー、ラベンダー、ジャスミン LAST: バニラ、ムスク、アンバー エネルギッシュな情熱を表現した 魅惑的なフローラルの香り

SHIRO

あなたはどんなパフューマーですか? 一言で表すとしたら「探求者」ということになるでしょうか。パ フューマーは、常に新しいことを学び続ける仕事です。「博学者」 でもありたいと考えていますね。分野を問わず優れた学識を持 った人であろうと努めています。

香水を通じて伝えたいメッセージを教えてください。

「Jumping off a cliff(崖から飛び降りる)」という表現が、私 の生き方をよく表していると思います。崖から飛び降りたいと 思っている人は少ないですよね。でも、恐怖に正面から向き合 い、安心よりも思い切りを選択することが、私にとっては大切 なんです。思い切って飛び込んだ未知の世界は、必ずしも居 心地のよい場所ではないかもしれないけれど、それが人間とし て、またパフューマーとしても成長する道だと思っています。迷 ったら、とにかく飛び込んでみてください。

Jasmine Liu China

花や植物が大好き 自由に空想して香りを

BLACK FOREST BLESSINGを一言で表すと? 人生に差す光、幸福、驚き。おとぎ話のハッピーエンディング のような。心地よくて安心する香りです。

力強いメッセージですね。

リスクを取らずに何が得られるのか。「あのときこうするべきだ った」という後悔の念を抱いたまま生きたくないんです。私が 人生で学んだ大切なことのいくつかは、失敗から得た学びです。

CHERISH MY LOVEはどんな香りですか? フローラルでありながら、必ずしも自然の花そのものの香りで はないところが面白さです。とりわけローズオキシドを加えるこ とで、水のような透明感と、メタリックなフレッシュさが加わり ました。

バラはパフューマーにとってどんな素材なのでしょう。

バラは香りのなかでも中心的な素材です。パフューマーとして 実際にバラを扱い始めると、その奥深さを実感します。私の場合、 出発点は調香学校での経験でした。フランスのシャトー・ド・バ ガテルで、本当にたくさんの種類のバラの香りを嗅いだんです。 今までにもバラを使った香水をつくられていますよね。違いは? 若い画家が最初は装飾をたくさん加えるように、若いパフュー マーだった私も、香りに多くの要素を盛り込んでいました。で も時が経ち、調香について理解を深め、花のさまざまな側面を 強調する方法を探っていくうちに、私にとってバラの集大成と いえるものができたのです。それは「ノイズ」を削ぎ落とすこ とでした。絵画において抽象表現へと進んでいくのに似ていま す。CHERISH MY LOVEは、いわば私にとっての抽象的なバ ラの香りです。その中で特に強調したのがローズオキシド。も ちろん他のレイヤーも共存していますが、ローズオキシドがバ ラの香りに現代的な気配を加えています。

抽象画のような香りということですね。

「不完全の美」、私がバラに取り組むうえでも、その感覚を大 切にしました。そしてライチの異なる色合いや質感を重ねつつ、 さらに後ろにはアンバーを忍ばせて、しなやかでまっすぐな女 性らしい強さを表現しています。

CHERISH MY LOVEの香りで伝えたいメッセージは何ですか? Love should be unique. バラを愛に例えるとしたら、愛は他と は比べることができない、唯一無二の特別なものだということ でしょうか。

CHERISH MY LOVE

私も大好きな森で、何度か訪れたことがあります。どうして BLACK FORESTをご存知なんですか? 実際に行ったことがあるわけではありません。パフューマーの トレーニングをしているときに、何度かドイツのミュンヘンへ行 きました。そのときにBLACK FORESTの存在を知ったのです。

ぜひ訪れてみてください。ドイツトウヒの木が黒く見えるから。 黒い森と呼ばれますが、実際には明るくて美しい森です。 はい、行ってみますね。私が空想したBLACK FOREST は、遥 か遠くにある謎めいた異国の森でした。グリム童話「ヘンゼル とグレーテル」の舞台のような。

パフューマーになったきっかけを教えていただけますか? 幼い頃から香りが大好きで、パフューマーという職業の存在を 知る前から、香水に限らず、食べ物や花などあらゆる香りに取 り憑かれていました。私の鼻は好奇心旺盛なんです。私の場 合嗅覚は、感情と繋がっているようです。視覚は事実をとらえ、 嗅覚は感情を動かす。そんな違いがあります。

素材を探して畑や森や海を訪れることはありますか? 私は花や植物が大好きです。花や果実がどのように育ち、実 っているかを見たくて、畑を訪れます。そこで働く人々の姿を 見ると愛おしくなるのです。農作業の大変さを実感し、素材を 大切に、そして適切に使おうと、背筋が伸びる思いがします。

BLACK FOREST BLESSING

スパイシーさの中に清涼感あるシトラスをも感じさせるカ ルダモンが、鬱蒼とした森の中に差し込む陽光を思わせる。 フローラルが鼻をくすぐると同時に、バルサムファーやシ ダーウッド、サンダルウッドが木々の深い香りを漂わせる。 ディープなウッディにトンカビーンを添えれば、上品な甘 さが明るさを与えてくれます。

Linda Song Singapore

研究者の探究心に 感性や感覚を加える

パフューマーを目指した経緯を教えていただけますか? パフューマーに憧れていたわけではなく、理系の研究職を探 す中で、感性や感覚を活かせる仕事を探して辿り着きました。

母はすごく音楽が好きで、家でいつも聴いていました。祖母 が洋服が好きだったことも影響しているかもしれません。

感性を活かすならほかにも選択肢がありそうですが。 アーティストやデザイナーが自分に向いているとは思えませ んでした。私は理系で研究が好きです。そう考えていくとパ フューマーという仕事は自分に合っているのかもしれません。

大学ではどんな研究をされていたのですか? 大学では環境分析の研究をしていました。川の水を汲んで医 薬品の含有量などを分析していました。目標を決め、そこに 向かってラボで地道に作業していくという意味ではパフュー マーの仕事と共通します。

パフューマーというのはどういう仕事ですか? 映像や音楽は信号にして遠くの人に届けられますが、香りは そうはいきません。自分でその場に行く必要がありますよね。 すごく便利な世の中になりましたが、香りに関してはアナロ グなことをしないと、良いものには出会えないと思います。

Jordi Fernández

Spain

偶然が開いた香水の扉 ヨーロッパ、アジアそして中東へ

あなたはどんなパフューマーですか? まず私がスペイン人であるというところから始めましょう。私は バルセロナで生まれ、ここバルセロナでキャリアをスタートさせ ました。 25 年以上前のことになります。もともと香水について は何の知識もなく、香水の世界に出会ったのは偶然です。バ ルセロナにある小さな家族経営の会社でインターンシップをし ていたときに香水に出会い、そこでまったく新しい扉が開きまし た。それがパフューマーになりたいと強く思ったきっかけです。 その先のお話を詳しく教えていただけますか? 私がつくる香水の香りを嗅げば、私自身がわかるはずです。 私のパフューマーとしてのキャリアは、さまざまな文化の交差点 にあります。地中海出身の西洋人でありスペイン人ですが、東 アジアや中東で働いてきました。キャリアの初めには中国、フ ィリピン、インドネシア、台湾、タイなどの国々を訪れ、その 後中東に移りました。ですから私の香水はこれら異なる文化で 過ごした経験とは切り離せません。そしていつも言っているの ですが、私の香水の特長は、力強く、個性的であることです。

なぜ力強さが大切なのですか? 中東やフランスでの私の経験が影響していると思います。中東 の人々は非常に大胆で力強い。そして中東の文化と深く結びつ いています。フランスでは自分に香水をつけるだけでなく、自 分の周りに香りの輪をつくる、つまり自分だけでなく他人にも香 りを纏わせるという感覚があります。一方、ヨーロッパの他の 地域では少し状況が異なりました。しかし今ではこの傾向が世 界中で広まっており、すべての国で共通のトレンドになっている と思います。私たちは力強さを求めています。人々は香水を楽 しみ、他人にも香りを感じてほしいと思っています。

あなたにとって調香とは? 私にとって調香することは「永続的な創造性のかたち」であり、 異なる文化をひとつに結びつけること。文化の多様性、それが 調香の魅力であり、私が調香に惹きつけられる理由です。

調香が異文化を結びつけるのですか? とても重要なことだと思います。香りはメッセージであり、文化 であり、私たちが自分自身を表現し対話する方法なのです。香 りを通して、自分の個性や出身地、あるいはあなたがどんな 人間なのかを伝えることができます。これにはいつも驚かされ ます。香りは感情を動かし、多様な文化や異なる背景を繋げる 役割を果たしているのです。例えば地中海地域では、生まれ たときからオーデコロンの爽やかで透明感のある香りに親しん でいます。中東では香りは儀式に関わるものであり、日本の香 道は、お香を焚いて客人を迎え入れます。香りと文化の結び つきは、各国の文化によって異なります。

専門的な教育は受けていないとおっしゃいました。

調香学校で学ぶのが一般的かもしれませんね。私の場合はパ フューマーのもとで働くという伝統的な方法で調香について学 びました。まず最初にあらゆる香料について学ぶことから始め ます。例えば現在私が働くラボには3,000 種類以上の香料が あります。鼻の教育とでもいいましょうか、とにかく香りを嗅ぎ 続けます。それが身についたら、次は香料を組み合わせてみ るのです。香料の研究は終わることがありません。今もなお、 素材に立ち返り、新たな発見を繰り返しています。

産地や生産者を訪ねることはありますか? もちろんです。私にとって調香は、職業というよりも生き方その ものです。これまで原料が生まれる土地を訪ね歩いてきました。 インドネシア・スラウェシ島のパチョリ、南イタリアのシトラス、 スペインのシスト、フランス・グラースのバラなど。それは仕事 であると同時に、人生の喜びでもあります。

JOY WITH YOU

喜びあふれる上品で可憐な 花畑をイメージした香り

ヒヤシンスやミュゲ、ジャスミンなどの幸福感をもたらす フローラルブーケを中心に、爽やかな柑橘とフレッシュな アプリコットが上品に重なっていきます。華やかなだけじ ゃないのは、ムスクやアンバーが落ち着いた印象を与えて いくから。

TOP: ベルガモット、レモン、アプリコット MIDDLE: ヒヤシンス、ジャスミン、ミュゲ、イランイラン LAST: ムスク、アンバー、サンダルウッド

PEONY BLISS

凛としたピオニーをイメージした 華やかなフローラルの香り

蕾に秘めた美しさが花開き、透明感あるフローラルが香る ピオニー。優美な花びらに青々しいグリーンがアクセント となり、凛とした涼やかな印象に仕上げます。みずみずし い甘さのあるアップルとペアー、ピオニーの華やかさを後 押しするジャスミンなどの花々が、大人っぽくもピュアで 可愛らしいオーラをまとわせます。

TOP: グリーン、アップル、ペアー MIDDLE: ピオニー、ジャスミン、マグノリア、ミュゲ LAST: アンバー、ムスク、サンダルウッド

Nanako Ogi

Singapore

感情を揺さぶる香り にじみ出すつくり手の人柄

BE LIKE YOUの香りについて教えて下さい。

勇気が持てる香りです。この香りをつけると勇気を持てる、新 しい自分に挑戦できる。つけていてすごく心地よいのに少し新 しいから、何か新しいことに挑戦したくなる。ちょっと背中を押 してくれるような、そういう香りです。オリジナルのバージョンは、 私が以前働いていた中東向けにつくったものです。

オリジナルからどのように変化しているのですか? 私ひとりの力ではなく、SHIROの皆さんとの共同作業です。私 は今シンガポールで働いていて、日本のことをよく知っている のは日本の皆さんですから。

SHIROが日本の枠に閉じ込めている側面もあるかもしれません。 次回ご一緒させていただく機会があれば、この香りを日本に落 とし込んだらこうなるけれど、中東だったらこんな香りですよと、 私からも意見をお伝えしたいです。

ぜひまた一緒にやりましょう。

香水をつくるときにどんなことを大切にしていますか? とにかく感情を揺さぶりたいと思っています。音楽家も画家

も、芸術家だったらきっとみんなそう思うんじゃないでしょうか。 それが悲しかったり、楽しかったり、何でもいいと思うのです。 私は香水をつける人にハッピーになってほしいと願っています。

調香師として香りから届けたい想いはありますか? いろいろなパフューマーにリンゴやバラの香りを依頼すると、 パフューマーによって香りはさまざまです。それはその人の パーソナリティ次第なんですよね。

調香師の個性が出るということですね。

そうです。使える材料は同じでも、それをどう表現するかは パフューマーの人となりやセンスによるのです。例えば美容 室に行って、カットはいいけど最後のセットアップが気に入 らないということがありますよね。でも、この人は私のセン スを分かってくれるということも。そういうのってスクール で教えられるものではなくて、その人自身が持っているもの だと思うのです。服の着こなし方みたいな、小さな違いです が、ニュアンスは必ず出てきます。

自由につくってくださいと言われたら どんな香りになるでしょう。

実のところそれはいつも取り組んでいるエクササイズで、朝、 最初にやることです。依頼されたものに取りかかる前に、ま ずは自分がつくりたい香りに取り組みます。それが後の自分 の代表作になったり。同じ素材を使っても、それをどう表現す るかというのはパフューマーの人となりやセンスが表れます。

社会的なメッセージはありますか?

自分のブランドを持っていたら社会的なメッセージを込めて つくると思いますが、現状は違います。私はブランドの方々 とお話して、そのフィロソフィーに耳を傾け、それを自分の 作品にどう落とし込むかを考えています。

あなた自身の個性はそこにどのように反映されますか? もちろん私の人となりや、心のあり方が反映されます。お互い に意気投合して取り組んでいるので、その時点で私の社会性 や人となりは、実際の店舗のカウンターに表れると思います。

パフューマーと企業がより緊密に協働することで、パフュー マーのメッセージが伝わると素敵ですね。SHIROとしては それに挑戦してみたいと思いました。

BE LIKE YOU

軽やかにまとうことのできる ウッディアンバーの香り

柑橘ならではの爽やかさとフローラルな甘さがほのかに広 がり、温かみのあるサンダルウッドとカシミヤウッドがア クセントを添えてくれます。上品なアーモンドとムスクを 加えれば、奥行きのあるウッディアンバーが全体を包み込 みます。

TOP:ベルガモット、レモン MIDDLE:サンダルウッド、ローズ、ミュゲ LAST:アーモンド、ムスク、カシミヤウッド

取材を終えて

今回の取材を通して感じたこと、それはパフューマーがとても素敵な仕事だ ということでした。職業というより、パフューマーという生き方と言った方が正 確かもしれません。香水からシャンプーや洗剤、そして食品まで、私たちの 暮らしは香りに包まれています。目に見えないので見逃されがち、いえ、嗅 ぎ逃されがちですが、それらはどこかでパフューマーたちがつくったもの。

パフューマーが取材を受ける機会は少ないそうです。確かに「パフューマ ー」や「調香師」という言葉は、日常会話ではあまり登場しませんよね。も っと一般的になって「香りが大好き!」という子どもたちが憧れる職業になっ てほしい。「絵を描くのが好きだった」と同じように、どうやら幼い頃から「香 りを嗅ぐのが好きだった」という子どもたちが居るようです。

エバリュエーターという仕事についても触れておきましょう。SHIROとパフ ューマーの間を繋いでくれているのがエバリュエーターです。依頼者がどん な香りを求めているのかイメージを聞き取り、パフューマーに伝達する重要な 役割を担っています。香りの方向性を決定する上では、エバリュエーターが 果たす役割が大きいそうです。次回改めてお話を伺いたいと思いました。

今回の取材はいくつか難しい点がありました。まず、パフューマーたちの 拠点がバルセロナ、上海、シンガポールなど、世界各地に点在していること。 現地に足を運ぶ SHIRO PAPER 編集部としては珍しく、全ての方に直接お 会いすることはできませんでした。また、企業秘密やプライバシー保護の観 点から、お名前をご紹介できないとか、写真撮影ができないなどの場面があ りました。「SUNNY MORNING」に関しては、パフューマーが退職したとい う理由で取材することが叶いませんでした。そこは取り繕わず、そのままに お伝えすることにしました。

一方で、フレグランスを深く掘り下げていく糸口が見えた取材でもありまし た。スキンケアでは自然素材や生産者との密接な関係を築いているのに比べ、 フレグランスは研究室で香料を組み合わせている光景しか思い浮かばなかっ たのですが、今回、パフューマー一人ひとりにお話を伺うことで、グッと景色 が広がりました。パフューマーそれぞれに個性があり、それが香りに反映さ れている。スキンケアやお店づくりと同じように、土地や人の個性を活かしな がら、つくり手との関係性の中でものづくりをする、フレグランスでもそれが できると確信することができました。

気候に揺れる畑から見える 支え合いのかたち

かつては人の背丈をゆうに超えるほど 大きく育ったラワンぶきですが、 近年は気候変動や連作の影響で 思うように育たなくなりました。

SHIROブランドプロデューサーの今井浩恵と 北海道足寄町の鳥羽農場を訪ねました。

Photographs & Text: SHIN SASAKI

鳥羽農場

Toba Farm

足寄で三代続く農家の家に生まれた秀男さんは、 1980年に就 農。現在はラワンぶきのほか、小麦や玉ねぎ、長いもを栽培し ています。町と農協、そして農業改良普及センターがラワンぶ き栽培に取り組んだ当初から参加し、妻の昇子さんは町内の小 学生を対象にしたラワンぶきの食育活動に取り組むなど、鳥羽 農場はラワンぶき栽培の第一人者です。近年は、息子の翔太さ ん、みのりさんも農作業に加わっています。

気候変動か、連作障害か 思うように育たないラワンぶき

ラワンぶきは、日本一大きなふき。成長すると高さは 2 3m にも達します。 SHIRO が化粧水やフェイスウォッシュに使用しているのは、鳥羽農場で育っ たものです。しかし近年は背丈が伸びず、収穫量も減少しています。6 月末、 旬を迎えた畑を訪ねましたが、本格的な収穫はまだ始まっていませんでした。

「今年はまだ、あの香りを嗅いでいないね 収穫時期が近づくと、ふきの香りが風にのって家まで届くんだ」

そう語るのは鳥羽秀男さんと昇子さん夫妻。畑を歩きながら、息子の翔 太さん、みのりさん夫婦も一緒にお話を聞かせてくれました。鳥羽農場がラ ワンぶきを育て始めたのはおよそ35 年前。度重なる川の氾濫で自生地が減 ってしまい、町、農協、農業改良普及センターの 3 者が協力して苗を培養し、 農家が栽培し始めました。

「自分たちが食べる分があればいいと思ってね ほら、俺は食べたい野菜しか栽培しないから」

と秀男さんは笑います。気づけば規模が広がり、SHIRO の製品を支える 大切な素材に。しかしここ数年は、気候変動の影響か、あるいは連作障害 なのか、大きく育たない年が続いています。カギとなるのは「4 番ぶき」。ラ ワンぶきは 1 シーズンに 4 回芽を出し、2 番ぶきと3 番ぶきが食用として出荷 されます。SHIRO が使っているのもこの部分。そして収穫後に芽を出す 4 番 ぶきは刈り取らず畑の栄養になるのですが、夏の高温と乾燥で十分に育たず、 根に栄養を蓄えられません。結果として翌年も成長できず、悪循環が続いて いるのです。

さらに、畑の過密状態も課題のひとつ。株が密集しすぎて水や栄養が行き 渡らないのです。間引きは効果的ですが、夏はほかの作物の世話に追われ、 炎天下での作業も重なります。ラワンぶきの単価を考えると、手をかけるの は難しいのが現実です。

ラワンぶきの品質を確認する鳥羽秀男さんと足寄町役場の職員

ラワンぶきの旬の時期にしか食べられない「ラワンぶき天ぷらそば」

新しい挑戦と支え合い

自然と地域が繋ぐ未来

そんな畑の奥に、少し驚くような光景が広がっていました。数年前の川の 氾濫で土が流された一角で、ラワンぶきがひときわ元気に育っていたのです。 過密や連作障害がリセットされたからでしょうか。川の氾濫で自生地が減って しまったことがラワンぶきの栽培を始めるきっかけでした。でも今は氾濫が逆 に力を与えてくれているように見えます。自然が持つ治癒力なのか、それと も一時的なことなのか。答えはすぐには分かりません。

大きく育たなくなった畑も同じように土壌をリセットする必要があるのでしょ う。しかしふきは地下茎で増えるため、畑から完全に取り除くのは簡単では ありません。育てようと思ってもかつてのように大きくは育たないけれど、取 り除こうと思うと根が強くて太刀打ちできないのです。鳥羽農場では既存の 畑で試行錯誤を続ける一方、 2 年前から新しい畑に苗を植え始めました。ラ ワンぶきは植えてから3 年でようやく収穫が可能に。収穫が始まるのは来年の 予定です。

SHIRO では今年、鳥羽農場では必要量が確保できず、足寄町役場の圃場 で育てていたラワンぶきを分けていただきました。SHIRO は農協や漁協と取 り引きするのではなく、生産地に足を運び、生産者と直接話して素材を仕入 れています。農協や町役場よりも、生産者との直接取り引きにこだわる私た ちに昇子さんは言います。

「農協や他の農家との関係はとても大切です 困ったときは助け合いですから 今の農協の担当者の方がね、すごくいい人なんですよ 彼がいたから、ラワンぶきの加工品をつくる 山菜工場が赤字から脱却できたのです」

足寄町役場の畑に着くと、いつの間にか秀男さんの周りに人が集まってい ました。出荷できるラワンぶきの見極め方について話しているようです。秀男 さんと昇子さんに連れられて町役場で町長にもお会いした今回の旅で分かっ たこと。それは農協が、農家だけでなく、町と連携して地域全体を支える存 在でもあるということ。山菜工場に安定してラワンぶきを供給し、雇用を守り、 畑作が不調な年には畜産が支える。そんな相互扶助の仕組みが、この町を 支えているようです。町役場に向かう前に、近くの両国食堂でラワンぶきの 天ぷらそばをいただきました。短い旬の 6 月だけに味わえる特別なそば。「や っぱりラワンぶきの天ぷらはうまい」と秀男さんは笑います。それこそが、彼 がラワンぶきを育てる原動力なのです。

フィールドワークの学び 「なぜ?」が導く未来

問いかけは、人を動かし、組織を変える力を持っています。

SHIRO が大切にしてきた「なぜ?」と問う姿勢は、 生産者との関係づくりから始まり、

社員一人ひとりの行動指針へと広がりつつあります。

今年の全社総会の舞台となった千葉・鴨川では、 その姿勢を体感するための フィールドワークが行われました。

Photographs & Text: SHIN SASAKI

魔法のことばは「なぜ?」 問いかけが力に変わる

7 月 1 日、株式会社シロの第 36 期全社総会が千葉県鴨川市で開催され、 500 名を超えるスタッフが参加しました。総会が終了した後にはフィール ドワークを実施。鴨川を拠点に活動する「苗目」の井上隆太郎さんを中心 に、地域の方々にご協力いただき、充実した時間を過ごしました。エディ ブルフラワーを食べたり、ひたすら草をむしったり、ポニーの小屋を掃除 したり、大豆を植えたり、アメリカザリガニを捕まえたり、雑草が生える 前の田んぼを撫でたり、ジビエや捕鯨について学んだり。

フィールドワークは、SHIRO にとってブランドの原点といえる活動です。 ブランドプロデューサーの今井浩恵は国内外の生産者を訪ねて、交流し、 製品をつくり続けてきました。フィールドワークを通じて確立した生産者 との信頼関係を社員にも肌で感じて欲しいと考えています。今井がフィー ルドワークをするときの魔法の言葉は「なぜ?」です。「なぜ?」「なぜ?」 と問い続けて、納得するまで質問に答えてくれる人こそ信頼できるパート ナー。SHIRO はそういう方たちに素材を分けていただく契約を続けてき ました。

会社を動かす 社員主導のフィールドワーク

全国各地から社員が集まり実施した鴨川でのフィールドワークは半日で終 了。社員たちはそれぞれの持ち場へ帰っていきました。さて「なぜの魔法」 を覚えたシロの社員たちはどこへ向かうのでしょう? ゴールドウインの「フィ ールドリサーチラボ」が参考になるかもしれません。ゴールドウインでは社員 が中心となり、テーマを決めてフィールドワークを行っています。

例えば「災害とアウトドア」というテーマで、同じくアウトドアブランドであ るモンベルの災害支援活動についてリサーチしています。2024 年 1 月に能登 半島地震が発生しました。モンベルは地震発生後 3 日後には支援物資を積ん で被災地に入り、食料やダウンジャケットなどを配布。「なぜそんなに迅速に 動けるのか?」「なぜ社内承認が取れるのか?」フィールドリサーチラボのメン バーは、モンベルに出向いてその仕組みを学び、自社でも迅速に災害支援 ができる体制を整えたそうです。社員一人ひとりが主体的に行動することで、 会社を動かしたのです。

「 SHIRO が成長するには、社員の知恵と想いが欠かせません 今後はもっと権限を委ね、社員自身が決定できる場を増やしていきます」 これはフィールドワークに出発する前、鴨川の体育館で今井が社員に伝えた メッセージ。シロが少しずつ変化し始めているのかもしれません。

苗目

naeme

苗目の井上隆太郎さんと裕美さんは、オーガニック食材 を日常にし、エディブルフラワーやハーブを飾りではな く食材として定着させる活動をしています。また、里山 を再生することで、豊かな自然を守り、動植物の多様性 を復活させることに取り組んでいます。苗目が管理する 数か所の現場に分かれ、草刈り、ポニーの世話、種まき、 収穫、アメリカザリガニの駆除などを行いました。

五膳貪  GOZENDON

地球にも身体にもやさしい農法で、農薬や肥料を一切使 わず、月の巡りに合わせて米とレンコンを育てている釋 信智さんと実奈さん。7 月は気温が上がり田んぼの雑草 が成長する季節。雑草を抜くのではなく、田んぼの表面 を撫でる除草作業を行いました。田んぼに素足をいれ、 手を水と土に通わせると、大地の力強いパワーを直接感 じる豊かな時間を過ごすことができました。

ミネオカ・ジビエ Mineoka Gibier Uzuméの広大な敷地には、オーナーのヘイミッシュ・マ ーフィーさんと、パートナーの富沢恵里さんが暮らす住 宅のほか、食べられる森、一棟貸しの宿泊施設などが点 在。Mineoka Gibier(ミネオカ・ジビエ)として、地元 猟師から持ち込まれた獣肉をソーセージなどに加工・販 売しています。持続可能な農業を軸とした暮らし方につ いて学びました。

くじらのもり  Kujiranomori Nature School くじらのもりは、千葉県南房総市の海、山、川、田畑を フィールドとした自然体験ツアーやキャンプなどの宿泊

こんなに近くにありました 人と人が自然に集まり 寄り添い合う居場所

SHIRO が北海道砂川市で進めている 砂川パークホテルをリニューアルするプロジェクト。

参考となる施設を求めて国内外を訪ね歩いてきました。

しかし、答えは意外にもすぐ近くにありました。

砂川から車で 1 時間、 旭川市の「まちなかぶんか小屋」を訪ねました。

Photographs & Text : SHIN SASAKI

SHIRO PAPER
BUNKA GOYA

コーヒー代を払わなくても居られる場所

ふらっと入れる、街のサードプレイス

「まちなかぶんか小屋」は、旭川市の中心部に位置する小規模なイベント スペースで、40 人ほど入ると満席になるほどの広さです。演劇や朗読会、ラ イブなど、日々さまざまなイベントが開催され、子どもから高齢者まで幅広い 世代が集まります。文化施設は全国に存在しますが、この小屋が特別なのは、 文化を発信する拠点でありながら、誰でも自由に過ごせる「みんなの居場所」 であること。

イベントやワークショップは一部を除き有料ですが、イベントが行われて いない時間帯も空間は開放されています。入場料は不要。ふらりと立ち寄り、 誰かと会話を交わすことができます。カウンターでドリンクを注文できるもの の、必須ではありません。軒先に並ぶ古本は「自由値段」で購入でき、いく らで購入するかは購入者次第。こうした仕組みにより、コーヒー代の 300 円 を支払えない人でも、自然に居場所を見つけられるのです。

自宅でも学校でも職場でもない第三の空間 それがまちなかぶんか小屋 です。人々が集い、会話し、文化に触れることで生まれる関係性は、売上や 動員数では測れない価値です。私たちは砂川パークホテルのリニューアルプ ロジェクトを進める中で、この居心地の良さや、誰もが受け入れられる場所 の重要性を強く感じています。小さなスペースであっても、工夫次第で地域 にとって欠かせない存在になれる まちなかぶんか小屋は、そのことを実 感させてくれる施設です。

行政が始めて、市民が受け継いだ 空き店舗から生まれた文化拠点

まちなかぶんか小屋が誕生したのは 2013 年 8 月。旭川市中心部の空き店 舗となっていた元薬局を改装し、市の中心市街地活性化事業の一環として開 設されました。初代の事務局長を務めたのは、有村幸盛さん。彼は独自に演 劇を上演する会員制団体「旭川市民劇場」の事務局長も務め、長年にわた り旭川の文化活動を支えてきました。まちなかぶんか小屋では、開設当初か ら演劇や落語、朗読会、映画上映会、ライブなど、幅広いジャンルのイベン トが次々と開催されました。

しかし、市の補助事業終了に伴い、小屋はわずか 8 か月で閉鎖します。市 民からの存続を求める声を受け、有村さんを中心に「まちなかぶんか推進協 議会」が設立されました。市から家賃や光熱費の補助を受けつつ、民間主 導での運営が再開されます。初年度の年間予算は1,050 万円でしたが、民間 に移行してからは600 万円、現在は 385 万円まで減少。まちなかぶんか小屋 の現状は、数値化できる指標では大賑わいとは言えない状況ですが、施設 の価値は集客や売上だけでは測れません。誰もが安心して過ごせる居場所と しての役割が評価されても良いはずです。

立地もまちなかぶんか小屋の特長のひとつです。「平和通買物公園」と七 条緑道が交わる交差点付近には、子どもの本屋「こども冨貴堂」や絵本作家・ あべ弘士さんの「ギャラリープルプル」もあります。地域に根付いた文化の 拠点とともに、まちなかぶんか小屋は街のコミュニティを支える存在として息 づいています。単なる文化発信の場にとどまらず、街の人々が集い、互いに 関わり合う“場”として成長してきたのです。

「たけちゃん」が繋ぐ人と人

支援ではなく友人として迎えるあたたかさ

「たけちゃん」の愛称で親しまれる竹田郁さんは、東京生まれ・東京育ち。

美術系大学を卒業後、アートに熱中しきれない自分に気づき、もともと関心 のあった福祉の道へ進みました。ソーシャルワーカーとして、生活保護世帯 の就労支援や子どもたちへの学習支援に従事します。転勤で旭川に移住しま すが、地域になじめず、友人をつくることに苦労しました。

竹田さんはソーシャルワーカーとして働きながら、「支援する側」と「支援 される側」という構図が関係性を制限してしまうことを感じていました。友人 であれば「少し変わった人」で済ませられることも、仕事の立場になると支 援計画を立てて接しなければならず、友人関係を築くのは難しい。竹田さん は福祉の仕事を辞めることにしました。その頃に読んだ内田樹さんの本の中 で印象に残っている言葉があるそうです。「仕事とは自分で選ぶものではなく、 仕事の方から呼ばれるものだ」という考え方です。

竹田さんは『沖縄うりずんの雨』というドキュメンタリー映画の上映会を企 画し、まちなかぶんか小屋に関わります。そして、仕事を辞めたあと最初に 「働かないか」と声をかけてくれたのがまちなかぶんか小屋だったのです。

竹田 郁  Kaoru Takeda まちなかぶんか小屋 事務局長。2008 年にワーカーズコー プ・センター事業団に入団。異動で旭川へ。主に失業対策 事業、自立支援事業に携わる。2015 年より、演劇や落語、 マーケットなど、文化・芸術をきっかけに人が集う「まち なかぶんか小屋」に参加。企画・運営を行う。

お金を介さない関わりが生むもの

日常の中にある小さなドラマと助け合い

竹田さんが運営に加わることで、まちなかぶんか小屋は単なる文化発信の 場にとどまらず、誰もが集える居場所としての役割を強めました。ソーシャル ワーカーとしての経験を活かし、居場所を必要とする人たちが、ひとりまたひ とりと自然に集まり始めます。竹田さんは「無料で居られて、少し人と話せる 場所って、街の中にはほとんどないのです。フードコートや図書館、そしてま ちなかぶんか小屋くらい」と語ります。

私たちが竹田さんのお話を伺っているほんの 1 時間の間にも、まちなかぶ んか小屋には次々と人がやってきて、気がつくと私たちのテーブルの周りに は椅子に座りきれないほどの人が集まり、話が弾みました。常連客のひとり にまちなかぶんか小屋について尋ねると、こんな答えが返ってきました。

「旭川の街を歩いていてギョッとする人がいたとしますよね 気がつくとその人たちが、まちなかぶんか小屋に座っているんです(笑) たいていたけちゃんが呼び込んでしまうんです」

イタリアの“地区の家”と重なる風景 文化と福祉がゆるやかに融合する場所

竹田さんのお話を伺いながら、編集部の頭に浮かんだのは、イタリア各 地でこの 10 年ほど増えてきた「地区の家」という場所です。「地区の家」は 民間組織によって設立・運営される公民館のような施設で、行政主導では なく地域住民のニーズに応じて活動が展開されています。編集部はこの夏、 イタリアのいくつかの地区の家を訪れましたが、そこで見た景色や空気感 は、まちなかぶんか小屋と多くの点で共通していました。

例えば、アレッサンドリアという町の地区の家。鋳物工場として建てられ、 その後倉庫として使われていた建物を改修した施設には、多目的スペース、 ワークショップや講座の教室、カフェ、ジム、古道具の倉庫など、さまざま な機能が備わっています。ヨガや語学講座、生活保護世帯の就労支援も 行われ、地域の人々が自由に出入りできる場として運営されています。文 化発信と福祉的な活動を融合させている点で、まちなかぶんか小屋によく 似ています。複数の機能を兼ね備えることで、人々の交流が促進され、地 域コミュニティが開かれたものになるのです。図書館、劇場、カフェ、学習 支援 異なる役割を同時に持つことで、誰もが必要なときに必要な居場 所を見つけられるようになっています。

行政の縦割りの仕組みでは、文化施設は文化活動に集中することが求め られがちです。しかし、まちなかぶんか小屋は地域の声に耳を傾け、ごく 自然に文化と福祉を両立しています。その柔軟さと温かさは、イタリアの地 区の家と同様に、人と人の繋がりを育む、地域コミュニティに欠かせない 存在です。 SHIRO はこの活動に共感し、砂川パークホテルのリニューアル プロジェクトの参考にさせていただくとともに、私たちがまちなかぶんか小 屋のためにできることは何かを考えています。

まちなかぶんか小屋では、イベントの有無に関わらず毎日いろいろなドラ マが繰り広げられていてまるで演劇のよう。壊れた草履の修理を手伝ったり、 おばあちゃんの携帯電話を一緒に探したりと、日常のちょっとした困りごとに も対応しています。

「イベントとイベントじゃない日の違いって なんだろう?って最近思います

主催者がいない日常の出来事だってイベントだと思うんですよね」

まちなかぶんか小屋では、運営側と利用者の境界は曖昧です。ふらっと立ち 寄った人が掃除を手伝ったり、チケットのもぎりを担当したりすることもありま す。こうして、日常の中で人々が自然に関わり合い、助け合う仕組みが形成 されているのです。

訪れる人々の年齢や立場、状況はさまざま。まちなかぶんか小屋は互いを 受け入れる空間です。居場所を求める人も、文化を楽しみたい人も、誰もが 対等に過ごせる。この自由さと温かさこそ、まちなかぶんか小屋の魅力であり、 竹田さんを中心とした運営体制が生み出す独自の価値なのです。

SHIRO NEWS

9月28日(日)に札幌ステラプレイス店が リニューアルオープン ブランドの原点となる 1 号店が新たな歴史を刻みます。

“捨てないお店づくり”を「 SHIRO 札幌ステラプレイス店」でも実現。コ ンセプトは「継承するものと北海道らしさ」。リニューアル前のお店から継 承したのは、床材とネイビーのエキスパンドメタル。これらの素材にクリエ イティブを注ぐことで捨てないお店づくりが実現します。床の上から雪の跡 のようなグラフィックを描き、雪降る冬の季節を表現。エキスパンドメタル は陰影投影のために利用したり、ペンダントライトにかたちを変えたり。奥 にある大きなガラス什器の下に積み上げられた丸太は建築構造材の端材 を活用。他の什器の側面には家具工房からいただいた木の屑を澱粉糊で 固め、北海道の木の恵みをふんだんに使うことに挑戦しました。

SHOP LIST

北海道

SHIRO 砂川本店 北海道砂川市豊沼町 54-1 みんなの工場内

SHIRO 札幌ステラプレイス店 ※ 北海道札幌市中央区北 5 条西 2-5 JR タワー 札幌ステラプレイス センター B1F

関東

SHIRO 表参道本店 東京都渋谷区神宮前 5-2-7 2F

SHIRO BEAUTY 表参道本店 東京都渋谷区神宮前 5-2-7 B1F

SHIRO ルミネエスト新宿店

SHIRO 伊勢丹新宿店

SHIRO 丸ビル店

SHIRO 銀座三越店

SHIRO 渋谷 PARCO店

“食べておいしい”「ラワンぶき」から 肌が喜ぶスキンケア

今年は鳥羽農場の一部の畑がお休みのため、「ラ ワンぶき」製品をつくるための収量が不足する ことが分かり、足寄町役場からも分けていただく ことになりました。その「ラワンぶき」は足寄町 役場の圃場で青々と元気に育っていたもの。実 際に食べてみたところ、アクがなく、みずみずし い風味の味わい深さに感動。「ラワンぶき」の茎 を切るとあふれ出る豊富な液汁が潤いを与える、 肌にもおいしいスキンケアをお楽しみください。

視点を変えた先に新たな出会い 「日高昆布」のスキンケアが誕生 「日高昆布」が SHIRO の新たな素材に加わりま した。昨今の気候変動により「がごめ昆布」の 収量が減っていることから、逆に増えていくもの に目を向けた先に出会えた素材。日高昆布のみ ずみずしさとビタミン豊富な特長を活かし、新た なスキンケア製品が生まれました。たっぷりの潤 いで肌を満たす『日高昆布フェイスマスク』と、 たった 1 本ですべてのスキンケアが叶う『日高昆 布アロエタマヌオールインセラム』を、ぜひお試 しください。

近畿

SHIRO 大丸京都店 京都府京都市下京区四条通高倉西入立売西町 79 大丸京都店 1F

SHIRO ルクア イーレ店

東京都新宿区新宿 3-38-1 ルミネエスト新宿 B1F

東京都新宿区新宿 3-38-1 伊勢丹新宿店本館 1 階=イセタン ビューティー コスメティックス

東京都千代田区丸の内 2-4-1 丸ビル B1F

東京都中央区銀座 4-6-16 銀座三越 地下 1 階 ギンザコスメワールド

東京都渋谷区宇田川町 15-1 渋谷パルコ 1F

SHIRO +Q(プラスク)ビューティー 東京都渋谷区渋谷 2-24-12 渋谷スクランブルスクエア

渋谷スクランブルスクエア店 ショップ&レストラン 6 階 SHIRO +Q(プラスク)ビューティー店

SHIRO 渋谷ヒカリエ ShinQs 店 東京都渋谷区渋谷 2-21-1 渋谷ヒカリエ ShinQs 1F

SHIRO ルミネ池袋店 東京都豊島区西池袋 1-11-1 ルミネ池袋 B1F

SHIRO 玉川髙島屋 S C 店 東京都世田谷区玉川 3-17-1 玉川髙島屋 S C 南館 1F

SHIRO ルミネ北千住店 東京都足立区千住旭町 42-2 ルミネ北千住 3F

SHIRO ルミネ横浜店 神奈川県横浜市西区高島 2-16-1 ルミネ横浜 1F

SHIRO ルミネ大宮店 埼玉県さいたま市大宮区錦町 630 番地 ルミネ大宮店 ルミネ 2 3F

SHIRO/TIAT DUTY FREE BEAUTY 東京都大田区羽田空港 3-4-2 第 2ターミナル 3 階 国際線出国エリア内 中部

SHIRO タカシマヤ ゲートタワーモール店 愛知県名古屋市中村区名駅 1-1-3 タカシマヤ ゲートタワーモール 6F

SHIRO ジェイアール名古屋タカシマヤ店 愛知県名古屋市中村区名駅 1-1-4 ジェイアール名古屋タカシマヤ 3F 化粧品

編集長:今井浩恵

Editor in Chief: Hiroe Imai

クリエイティブ・ディレクター &

表紙写真:佐々木信(3KG)

Issue 6

発行:株式会社シロ お問い合わせ

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Creative Director & Cover Photograph: Shin Sasaki

グラフィックデザイナー:石田愛実(3KG) Graphic Designer: Manami Ishida

大阪府大阪市北区梅田 3-1-3 ルクア イーレ 2F

SHIRO 阪急うめだ店 大阪府大阪市北区角田町 8-7 阪急うめだ本店 3F HANKYU BEAUTY

SHIRO 大丸心斎橋店 大阪府大阪市中央区心斎橋筋 1-7-1 大丸心斎橋店本館 1F

SHIRO 大阪タカシマヤ店

SHIRO 大丸神戸店

中国・四国

SHIRO ミナモア広島店

九州

SHIRO 岩田屋店

SHIRO 博多阪急店

Taiwan

大阪府大阪市中央区難波 5-1-5 髙島屋 大阪店 1 階化粧品売場

兵庫県神戸市中央区明石町 40 番地 大丸神戸店 本館 1F 化粧品

広島県広島市南区松原町 2 番 37 号 ミナモア広島 2F東

福岡県福岡市中央区天神 2-5-35 岩田屋本店 本館 1 階=化粧品

福岡県福岡市博多区博多駅中央街 1-1 博多阪急 1F 化粧品

SHIRO 新光三越台北信義新天地 A11 店 台灣台北市信義區松壽路 11 號 1 樓

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SHIRO Seongsu 57, Yeonmujang-gil, Seongdong-gu, Seoul, Korea

UK

SHIRO Monmouth Street Ground Floor, 63 Monmouth Street, London, WC2H 9DG, UK

発行人:福永敬弘 Publisher: Takahiro Fukunaga

編集:田﨑菜月 Editor: Natsuki Tasaki

編集:河合裕子

Editor: Yuko Kawai

Thanks to:赤津亮子 / Linda Song / Jasmine Liu / Jordi Fernández / Nanako Ogi / May Chioh / 大場卓 / Laurine Sautour / 湯川智之 / 和久井康司 / 佐藤健太朗 / 鳥羽秀男 / 鳥羽昇子 / 鳥羽翔太 / 青木みのり / 井上隆太郎 / 井上裕美 / 釋信智 / 稲田実奈 / Hamish Murphy / 富沢恵里 / くじらのもりの皆さん/外房捕鯨株式会社の皆さん / 杉山和哉 / 竹田郁 / 井上岳一 / 多木陽介 / ファビオ・スカルトゥリッティ / 北崎千鶴

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