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地下での電池使用で 鉱山がより安全に 電力網なしの 電池貯蔵 ニッケルとそ の 用 途 の 情 報 誌

電池技術

過去、現在そして将来のニッケルの用途

2017年第32号第1巻

電力網管理― 需要と反応


© SOLAR IMPULSE ¦ MERZ ¦ REZO.CH

© SOLAR IMPULSE ¦ REVILLARD ¦ REZO.CH

ケーススタディ 09

ソーラーインパルス2、 ソーラーインパルス2、2014年の試 験飛行におけるスイス上空の飛行

ソーラーインパルス2 蓄積した太陽エネルギーだけで昼夜を分かたず飛行するソーラーインパルス2 (Si2)は不利な条 件をものともせず、燃料に一切頼らないで世界一周という歴史的な偉業を成し遂げました。Si2の 生みの親の二人、ベルトラン・ピカールとアンドレ・ボルシュベルクが交代で一人乗りのコックピッ トに入り、アジア、太平洋、米国、大西洋、地中海、中東を越える17区間、43,041kmを飛行したの です。 飛行機の設計時点でピカールとボルシュベルクが理解していたのは、抗力を少なくする大きな翼 長を持ち、電池で一晩中飛行するための最大エネルギーを蓄えておけるだけの十分な数の太陽 電池を格納できるような広い表面の超軽量構造の飛行機を作る必要があるということでした。 「飛行機の構造には最先端の技術を取り入れており、複合構造、軽量素材、電気推進、さらにはエ ネルギー管理と貯蔵方法といった面での科学研究に刺激を与えた。」とアンドレ・ボルシュベルク は語っています。 ボルシュベルクは日本からハワイまで太平洋を五日間続けて休みなく飛行するという記録を達成 しました。そしてベルトラン・ピカールはソーラー飛行機で初めて大西洋を横断したのです。国際 航空連盟(FAI)で公認もしくは審査中となっている世界記録は全部で19あります。 「私達は少しでも余った電力を電池に蓄え、太陽から取れるエネルギーを1ワットといえども最大 限利用しなければならなかった。エネルギー効率を高めるためにあらゆる手を打った。」ボルシ ュベルクはこう話しました。 Si2はKokam社が持つ最先端の超高エネルギーのリチウム・ニッケル・マンガン酸化コバルト (NMC)電池技術を使った電池を使用しました。この電池が選ばれたのは、広範囲の温度、湿度、 圧力状況で作動可能である上に、エネルギー密度と効率が高かったからです。 38.5kWhの超高エネルギーNMCの150Ah電池内臓のバッテリーパック四つで合計154kWhのエ ネルギーを貯蔵したが、Si2の17,248個の太陽電池で11,000kWhの電力を生み出し、その大部分 はNMC電池に蓄えられ、夜間に飛行機への電力供給のため使用されました。 この超高エネルギーNMC電池はキログラム当たりおよそ260ワット時(Wh/kg)のエネルギー密度 を持っています。こうした高エネルギー密度により、Si2は飛行機の重量やサイズを増やすことな く、より多くのエネルギーを貯蔵することが出来ます。さらに、この電池の効率は96%であり、電池 を充電したり放電したりする際のエネルギーの無駄が少なくなるのです。

2 ケーススタディ

 ソーラーインパルス2、2014年スイス、 ペイエルンの飛行場で

ソーラーインパルス2、 その事実: ・17,248個の太陽電池が翼に組み込ま れ、四つのバッテリー(バッテリー当たり 38.5kWh)に電力を供給し、そこから四つ の電気エンジン(それぞれ13.5kw)とプロ ペラに動力を与える。 ・カーボンファイバー製単座飛行機 ・コックピットは3.8m3で加圧も加熱も なし ・翼長:72m (ボーイング747の68mより大きい) ・全長:25m ・重量:2,300kg (大型自家用車と同じくらい) ・巡航速度:45-55km/h (25-30 KIAS(ノットにおける指示対気 速度)) ・最大高度:8,500m 飛行高度:280 (28,000ft.) ・推進装置の効率は93% 即ち、エネルギー損失はわずか7%

2017年第32号第1巻


2017年第32号第1巻

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ニッケルとその用途の情報誌 発行:ニッケル協会 www.nickelinstitute.org プレジデント:David Butler 編集発行人:Clare Richardson crichardson@nickelinstitute.org 投稿者:John Chapman, Parul Chhabra, Gary Coates, Peter Kelly-Detwiler, Carly Leonida, Geir Moe, Kim Oakes, Marcel Onink, Kristina Osterman, Nigel Ward

住所: Rue Belliard 12 Brussels 1040, Belgium Tel. +32 2 290 3200 communications@nickelinstitute.org 本誌は読者への一般情報提供を目的としており、 しかるべき 助言を確保せずして、いかなる特定の目的あるいは用途のた めに使用もしくは依拠されるべきではない。本誌は専門的に 見て正確であると信じられるものではあるが、 ニッケル協会と その会員、 スタッフ及びコンサルタントはあらゆる一般的な、 もしくは特定の目的のための適合性について、何ら表明もしく は保証するものではなく、 また本書に示されている情報に関し て、いかなる種類の義務もしくは責任を負うものではない。

未来に電力を供給 電池市場は文字通りに、かつ隠喩的にも活況を呈しています。気候変動への関心、エ ネルギー効率アップに向けての動き、政府による二酸化炭素排出量の目標設定といっ たものすべてがハイブリッド自動車や電気自動車を選択するように後押ししています。 これに加え、電池やエネルギー貯蔵を含む再生可能エネルギー技術への関心の高まり や、電子機器、スマートフォン、電動自転車の動力源となる長寿命電池に対する需要が あるのです。状況の変化は激しいです!

ニッケル含有リチウムイオン電池のシェア拡大 3% 7% Mid-Ni NCA NMC 10%

ISSN 0829-8351 印刷:カナダ 再生紙使用 表紙:Constructive Communications 表紙画像:Constructive Communications

Low-Ni NMC 19%

LMO 13%

LCO 25%

目次 ケーススタディ ソーラーインパルス2 . . . . . . . . . . . . 2 焦点 編集者記 . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 3 特集 電池、過去、現在、そして将来 . . . .4-5 ニッケルの重要性 . . . . . . . . . . . . . . 5 電力網を充電するためのバ ッテリー貯蔵. . . . . . . . . . . . . . . . . .6-7 需要側対応システム . . . . . . . . . . . .8-9 電池のリサイクリング . . . . . . . . .10-11 注目される用途 坑内鉱山 . . . . . . . . . . . . . . . . . . .12-13 電池用のニッケルメッキスチール . 15 シボレー・ボルト . . . . . . . . . . . . . . 16 簡略に 太陽エネルギーを貯蔵 . . . . . . . . . 14 地震に強い橋 . . . . . . . . . . . . . . . . . 14 Web links . . . . . . . . . . . . . . . . . . . . 15

High-Ni NMC

LFP 22%

Mid-Ni NMC 18% 13% Low-Ni NMC

High-Ni NMC 18%

NCA 9% LMO 12%

LTO 1%

LCO LFP 15% 14% LTO 1%

2016年 ニッケル含有39%

2025年 ニッケル含有58%

NMC: ニッケル・マンガン・コバ ルト NCA: ニッケル・コバルト・アルミ LFP: リチウム・リン酸塩 LCO: リチウム・酸化コバルト LMO: リチウム・酸化マンガン LTO: リチウム・チタン酸塩

出典: ROSKILL

デザイン:Constructive Communications

電気自動車(EVs)は、今はまだ世界の自動車生産に占める割合は少ないが、そのシェア は伸びています。EVsの成長予測は様々であるが、その予測のすべてが大きな伸びを見 込んでいます。現在、実際に走行しているEVsの割合は1%を満たしておりません。最近 の予測では2025年までにそのシェアが7%から11%まで増え、その動力源の多くはニッ ケル含有リチウムイオン電池となるだろうと見ています。  新型のニッケル含有電池技術は、再生可能エネルギープロジェクトに関連しているエ ネルギーストレージシステムにおいてもその役割を果たすよう求められています。風力 や太陽光が利用できる間は、風力タービンやソーラーパネルが発電を行い、そして電 池技術によりエネルギーを蓄えておき必要になったらそれを使えるようにしているの です。 将来の電力システムの重要な技術として何年も話題になっていましたが、その後日産や テスラといった大手の国際ブランドが参画してきました。テスラは2015年の初めにニッ ケル合金カソードを使ったリチウム電池でエネルギーストレージマーケットへの参入を 発表しました。 この発行号では電池技術の過去、現在、未来と共にニッケルの役割を中心に取り上げ ています。このテーマは広範囲に及ぶため、本号はほとんどのページをこのテーマに当 てることとなりました。この実態は複雑です。用途が変われば技術も変わり、ある電池 技術が単独の「勝者」として現れることはありません。ニッケルは一世紀以上電池に使 われており、現在見通せる範囲ではこの動きの速いセクターで重要な役割を果たし続 けるでしょう。 Clare Richardson Nickel誌編集長

2017年第32号第1巻

焦点 3


IMAGES FROM WIKIMEDIA COMMONS UNLESS OTHERWISE NOTED

v 1748 ベンジャミン・フランクリン 新用語「電池」 を作る ―米国

1799 w 最初の直流電池: ボルタ電堆 アレッサンドロ・ボルタ ―イタリア

v 1859

© 2017 ENCYCLOPÆDIA BRITANNICA, INC.

最初の蓄電池 鉛酸蓄電池 ガストン・プランテ ―フランス

1899 w 最初のニカド電池 ウォルデマール・ユングナー ―スエーデン

v 1959 最初のアルカリ電池 ルイス・アーリ ―カナダ

1967 w

v 1980 リチウムイオン酸化コバ ルト陰極 ―米国

リチウムイオン個体電池 ―米国

4 特集

過去50年以上という期間を経過する間に、鉛蓄電池からリチウムイ オン電池へと、電池は目を見張るような変貌を遂げてきました。以 前、電池は限られた用途でしか使われていませんでした。車のスター ター、おもちゃの動力源、リモコン、懐中電灯などです。鉛蓄電池は 長い間ガソリン車に使われており、一方アルカリ電池は家庭の色々 な機器向けにその役目を果たしていました。 そして、ニッケルを使った充電式電池が出て来ました。それはニッ ケルカドミ(NiCd)と、より長寿命のニッケル金属水素化物(NiMH) です。充電式電池で電動工具や初期のデジカメが充電されること により、我々の仕事の仕方や生活様式が変わっていきました。その 後、NiMHが90年代半ばにトヨタのプリウスの支援技術として、輸送 手段向けに大きく飛躍を遂げました。これにより駆動技術が絶え間 ない変化を遂げ、今日の電気自動車につながっていきました。しかし ながら、車、工具、カメラやその他新たに生み出される装置が必要と する電力密度としては依然十分ではありませんでした。 リチウムイオンが出現 そこでリチウムイオン(Li-ion)が1991年に商業ベースで使われ始め(ほ とんどの種類がニッケルを含有)、初期のビデオカメラが草分けとな り、その後のスマートフォン、ノートパソコンやその他の我々が今使っ ている携帯機器につながっていきました。またリチウムイオンは次世 代の自動車に内蔵されているが、それは長距離を移動する車両には 優れた電力密度が決定的な要素となったからです。 半世紀の間に、我々の生活にとって電池がほとんど重要ではなかっ た時代から、ポケットや財布に一日中入れておくような時代に移って 行きました(中にはペースメーカーのようにバッテリーを文字通り体内 に入れている人もいます)。空港のラウンジで回りを見れば、必ずコン セントはどこかと探しまわる人がおり、電池が日常生活にいかに大事 であるかが分かります。

NiMH電池開発 バテル‐ジュネーブ ―スイス

2014 w

電池: 今もいいけど 明日はずっと良 くなる

ニッケルにとって当面は明るい 多くの技術がそうであるが、その技術を使えば使うほど我々はより 良い技術が欲しくなります。電池もそうです。携帯電話やノートパソ コンを一回充電するだけで何日も使いたい。電気自動車でガソリン 満タンの車と同じくらいの距離を走りたい (そして10分以下で充電し たい)。さらには大量かつ複雑な配電網をバッテリーでサポートした い。 もっと軽量で、高密度で、強力で、早く充電できるバッテリーが欲し い。ここで疑問が生じるのですが、それをどうやって手に入れるので しょうか?既存の技術に絶え間なく手を加えるということなのでしょ うか?あるいは革新的なものが間近に潜んでいるのでしょうか?もし そうなら、それを手に入れるまでにどれくらいかかるのでしょうか?

2017年第32号第1巻


さらに視界はぼんやりとしている まず、既存のリチウムイオン化学の進歩について見てみましょ う。ひとつの傾向はニッケル・マンガン・コバルト陰極へのシフト であり、これによりエネルギー密度が高くなり、産出エネルギー 当たりのコストが下がりました。また超高密度リチウム空気電池 に向けての動きもあります(テスラはこの分野での特許を持ってお り、それ以外の研究者も大きな進展を見せています)。同時にサ プライチェーンが効率的に整備され(そして中国が大量生産能力 を増強し)たため、リチウムイオン電池のコストは大幅に低下しま した。これから数年の間にコストは最大50%低下すると観測筋の 多くは見ています。 さらに言えば、今後の見通しははっきりしていません。次世代にリ チウムを大きく変えるものは何か? それが始まるとした場合、 どこから始まるのか? そしていつ始まるのか? ひとつの可能 性のある候補は固体バッテリーであり、これはより安全で、より高 密度(同じスペースで最大二倍まで)で、より長寿命であるが、今の ところとても高価です。こうしたバッテリーは、価格低下を促進す るような経済規模に至るまでは、足掛かりとして何かの装置で使 われる必要があります。おそらくこれが皆さんのスマートフォンに 使われるようになるまでに4、5年はかかるでしょう。 硫酸リチウムも候補であるが、それはリチウムイオンに比べて4倍 の密度があるということと材料費の安さがその理由であります。 進展はあるものの、重要な技術的問題や安全性の問題が解決さ れる必要があります。 電池革命の進行が加速 長い間、電池技術はすべて材料科学そのものでした。それは様々

な元素がどういう挙動をするかを調べるために、周期律表で色 々組み合わせてみることでした。今は、数年前までは出来なかっ た方法で化学的性質を調べることが出来ます。高性能のスーパ ーコンピューターのおかげで、一秒間に千兆もの計算が可能なの で、様々な元素を組み合わせて仮想世界で化合物にしてどういう 挙動をするかを迅速に調べることが出来るのです。それは光や電 気を伝えるか? それは可鍛性か脆性か? 仮想の化合物を実 際の化合物にして、現実の世界でさらにテストすることが可能な のです。研究者は今では製品を市場に出すまでの時間を半分に 減らせると考えています。 より良い電池技術 これから5年以内にスーパーコンピューターで「仮定の」計算を開 始できると期待されており、ずっと人間に近い推論を行うことが 出来ると考えられています。米国エネルギー省は研究と技術につ いての検討の中で、 「物理理論、先進のコンピューターモデル、膨 大な材料特性データベースを組み合わせて配合を最適にし、目的 とする構造と特性を作るように処理することにより、特定用途向 けの特性を持った新材料の設計を加速する」と指摘しています。 これは今よりもずっと早く、新しい電池技術を市場に出すというプ ロセスを加速することを約束するものであります。 我々はこれか らの10年間で、はるかに優れたバッテリーを目の当たりにするこ とになるだろうが、その技術はまだはっきりしていません。 過去数十年間、電池が活躍する生活を支援するために、ニッケル は大事な役割を果たしてきました。そして予測される将来におい ても、ニッケルはその役割を果たし続けると思われます。

充電式電池技術における ニッケルの重要性 電池とは一つまたはそれ以上の電気化学 セルで構成される装置で、陽極と陰極と いう二つの電極そして電解液から成って います。二つの電極が電気経路でつなが ると電子が流れます。電池が電力を供給 リチウムイオン(NMC)充電式電池 放電メカニズム

層状グラファイト(陽極)

電子

電流

Li+

Li+

Li+ Li

+

Li+

Li+ Li+ Li+ Li+

Li

Li Li

+

+

+

電解物 LiCC+Li++ e-

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Li++MO2 + e-LiMO2

リチウム金属酸化物(陰極)

する場合、陽極が電子の発生源となり外 部回路と接続されると電子が流れて外部 の装置にエネルギーが供給されます。 電解液は内部でイオンとして移動するこ とが出来、分離電極で完了する化学反応 を起こしながら、外部回路にエネルギー を送ります。それが電池内部でのこうし たイオンの動きであり、それにより電流 が電池から流れて電力を供 給するので す。

電池には二種類あり、電極が再生可能で 電池が再充電可能かどうかでその種類が 決まります。こうした分類は、一次(使い捨 て)電池と二次(再充電)電池に分けられま す。 二次(再充電 )電池には色々な種 類があ り、おなじみの自動車用鉛蓄電池、ニカ ド(ニッケル・カドミ)、NiMH(ニッケル水 素)、Liイオン(リチウムイオン)などがそ うです。ニッケルはリチウムイオンを始 め、多くの二次電池の設計で重要な陰極 材料となっていますが、以下はその表で す。

電池タイプ

陰極

陽極

電解液

アルカリ性(P)

二酸化マンガン(MnO2)

亜鉛

水性アルカリ

鉛酸(S)

二酸化鉛(PbO2)

鉛

硫酸

ニカド(NiCd)(S)

オキシ水酸化ニッケル (NiOOH)

カドミウム

Potassium hydroxide

水素吸蔵合金

水酸化カリウム

炭素系、通常はグラフ ァイト

有機溶剤中のリチ ウム塩

ニッケル水素(NiMH) (S) リチウムイオン(LCO) (S)

リチウム酸化コバルト (LiCoO2)

リチウムイオン(NMC) (S)

リチウム・ニッケル・マ ンガン・酸化コバルト (LiNiMnCoO2)

リチウムイオン(NCA) (S)

リチウム・ニッケル・コバル ト・アルミ(LiNiCoAlO2)

(P) =一次、(S) =二次

特集 5


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世界の 低炭素電力網に もっと電力を

6 特集

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世界の電力網を後押しする 電池市場が急増し始める リチウムイオン(Li-ion)電池(多くがニッケ ルを採用)がより安くよりクリーンという方 向へ世界的にシフトする中で、電力網を後 押しする不可欠な役割を果たすと思われ ます。 この動きは主に風力と太陽光という再生 可能エネルギー資源の著しい増加に起因 しています。米国では過去三年間で風力 と太陽光が新規の発電能力の半分以上 を占めています。アジアと欧州では再生可 能分野に何十億ドルもの投資が行われて おり、一兆ドルの持続可能な電力網構築 の途上にあります。

例えばネバダ州にあるテスラの有名なギ ガファクトリーは2018年までに35,000メ ガワット時(MWh)の生産を見込んでいま す。米国のたった一つの工場でちょうど四 年前に世界で生産されたすべてのリチウ ムイオン電池に匹敵する生産が行われる ことになるのです。テスラの工場の生産の 約三分の一は電力網向けとなります。 しかし動いているのはテスラだけというこ

ニッケルに朗報 これは長期的に見てニッケルにとっての 朗報です。リチウムイオン電池陰極材料 の世界 の大 手 供 給 者はニッケル・マン ガン・コバルトの生産能力を拡大中です (NMC、各元素の典型的な比率は33%)。 この生産量のほとんどはEV向けだが、電 力貯蔵施設にも向けられます。電力網に おけるエネルギー貯蔵ではNMCテクノロ

貯蔵されているのは何か?  エネルギー貯蔵 協会が発表している最 近の数字は、エネルギー貯蔵施設が急増 していることを示しています。実際、米国 では2016年に設備導入の規模が三倍に なりました。しかしこれはほんの始まりで す。 2017年に、米国のエネルギー貯蔵施設の 数はさらに50%近く増加するものと思わ れます。今年1月にカリフォルニアで三ヵ所 の貯蔵施設(すべてがリチウムイオンで ニッケルを含有 している)が設置された が、これは昨年米国で設置されたものの 15%に相当します。 他の国でも固定貯蔵施設(リチウムイオ ン電池)を電力網に組み入れる動きが急 速に広がっています。例えば韓国電力公 社は、電力網安定化のために反応の早い 貯蔵施設用に500MWのNMCバッテリー を使用するという計画を立てています。 日本では最近、貯蔵プロジェクトと同様に 何億ドルもの投資を電力網に対して行っ ています。 規模の経済がリチウムイオンを有力な技 術に これが家庭用電化製品向け市場における リチウムイオンの長い歴史と、リチウムイ オンの製造に向けての最近の膨大な規模 の投資の結果であり、その大部分は電気 自動車(EV)産業のサポートに向けられて います。

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問題は、風はいつも吹くわけではなく、太 陽はいつも出ているわけではないという ことです。こうした複雑で広範囲に及ぶイ ンフラを安定させるために電池が採用さ れているのは、こうした理由があるからな のです。  テスラの最新マイクログリッドソリューションはそのエネルギー貯蔵技術によって、柔軟で適 応能力の高い電力網を促進することを狙いとしている。

とではなく、むしろリチウムイオン分野で テスラは最大プレイヤーとはならないか もしれません。 中国が動き出している 中国が価格を引き下げ、需要を喚起して、 世界経済を引っ張るでしょう。 電池網貯蔵施設の成長軌道は非常に急 勾配です。中国は既に世界生産の最大シ ェアを握っています。 仮に中国が太陽光発電パネルでやった ことをこの電池でもやれるなら、市場を 席捲することが出来るでしょう。電気自動 車(EVs)の普及を進めることで、中国がリ チウムイオン電池の需要を増大して行け ば、生産面で規模の経済に達します。数 量増とサプライチェーンの整備とで来年 にはコストが最大で40%下がると予測する アナリストもいるくらいです。 この分野で最大の中国企業はアンペレッ クス・テクノロジーで、この一年でリチウム イオン電池生産量を三倍にし、世界のト ップクラスのLGケミを上回りました。現在 およそ8,000メガワット時(あるいは8ギガ ワット時−GWh)の生産だが、2020年ま でに50GWh(テスラの半分)まで急増さ せる計画です。

ジーがリン酸鉄リチウムといった別のリチ ウム競合技術を急速にけん引しており、 開発者が陰極に採用する動きとなってい ます。 可能性の世界 電力貯蔵施設は未だ初期段階にあり、こ の市場規模についての将来の見込みには 大きなばらつきがあります。近い将来につ いては、EVがリチウムイオン電池の新規 需要をもたらし、そこにはニッケルが使わ れると思われます。 コストが下がりビジネスモデルが整うにつ れ、電力貯蔵施設の役割はごく近い将来 に極めて重要なものとなるでしょう。すで に一般家庭で使われている何百万もの太 陽電池パネルを電力貯蔵が補完するこ とになると思われます。電力網の段階で は、AESエネルギーストレージといった主 要エネルギー貯蔵会社は、リチウムイオン 貯蔵が新しいピーク発電プラントや将来 のグローバルな電力網構造の重要な部分 でコスト競争力を持つだろうとすでに予 想しています。 はっきりしている事は、将来の低炭素の 電力網においてニッケルが重要な役割を 持つだろうということです。

特集 7


需要側対応と電池貯蔵システムが エネルギーに対する需要は国家として、地域社会として、また各 家庭においても継続的に増大しています。 この需要に対する 従来の対処方法は供給側の生産を増やすというものでした。 しかしながら最近では需要側、すなわち消費者自身により注目 するようになってきました。その意図はピーク時における需要を 調整するもので、例えば消費者に対しオフピーク時に電力を使 用するよう経済的インセンティブを与えるなどです。 この増加する需要に応えるため非常に有力視されてきた代替手 段は、 「地域」にてオフピークに作られたエネルギー(電力)を 貯蔵し、必要な時にいつでも使用可能にすることです。 需要側対応(DSR)に対するこの後者の対応により、需要のピー ク自体減少しないが、ニッケルを含むリチウムイオン電池を多く 使用して貯蔵されたエネルギーを管理し、一日のうちクリティカ ルな時に使用可能になるようにしています。 DSRの利点 国家的電力会社にとって自動化されたDSRシステムは、従来の 火力あるいは水力発電に比べ、需要の急激な増加に対しより速 やかに対応できます。更にこれは分散技術に基づいているた め、一ヵ所だけによる機能停止は起こりません。高頻度でリチウ ムイオン 技 術に基づ いている蓄 電システムに接 続された場 合、DSRは再生可能な供給源からエネルギー(電力)を蓄えるた めオフピークの需給のバランスは保たれることとなります。 エネルギー貯蔵システム(ESS)は特に重要である、というのもEU において2016年に作られた新規のエネルギー生産能力のうち 21ギガワット(86%)は風力、太陽光、その他再生可能な供給源 からであるが、これらはいずれも断続的な性質を持っています。 これら再生可能エネルギーをより効率的に使用することで、炭 素排出を削減することにもなっています。 英国ナショナルグリッド(英国電力公社)はDSRと蓄電システム の連携に投資を増やしているエネルギー供給社の一つです。英 国の直近の電力取引入札(キャパシティ― マーケット オー クション)への対応として、約500メガワットは風力及び太陽光 発電への移行が継続していることを反映し、このような新規の 蓄電プロジェクトから供給されています。 全当事者にとって柔軟性を増すもの この蓄電システムの利用の増加は国家的電力会社に限られたも のではなく、工業的および商業的市場においてもかなり活発化 しています。英国の技術会社Open Energi社はDSRおよび蓄電 をベースにした解決策を提供しています。

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Open Energi社取締役のDavid Hill氏は「電力メーター外の末 端の蓄電システムとDSRを結合させることが、消費者にとっての 柔軟性をフルに生かすこととなり、出力を削減することで電池 の寿命を伸ばすことが出来る。これにより事業として全ての操 業にわたり、コスト及び炭酸ガス発生を極小化し、電力システム の運用自体を変革する可能性がある。」と述べています。 DSRの拡大につれ、ニッケルに対する需要はそれと共に増加し、 全世界の配電システムの多面性を強めることになっています。

8 特集

2017年第32号第1巻


が 課題に立ち向かう DSRの実働

ジェノバ大学

NEXTERA / DEMOSS PETRIE SUBSTATION SYSTEM

蓄電システムと結合したDSR機能の導入は、柔軟性及び信頼性の増強と同時に、よりクリーンな再生可能なエネルギー源の使 用が増加することを意味しています。米国及びイタリアにおける下記の産業ケーススタディは、確立された蓄電システムがこれ らの目的を達するための手助けとなることを示しています。

 NextEra 変電所システム ケーススタディ − TEP/ NextEra(リチウムイオン電 池―NMCニッケルマンガンコバルトオキサイド) ツーソン電力会社(TEP)はアリゾナ州南部において40万を 超える顧客に電力を供給する電力会社です。 TEP社は地元の電力網の復元力の増強を図るため、フロリ ダ州Juno BeachのNextEra Energy Resources社の子会社 と協働し、10メガワットのリチウムニッケルマンガンオキサ イド(NMC)蓄電システムを導入しました。これは現在電力の 需要増加時に顧客に対し信頼性のある供給を維持するの に貢献しています。 興味深いことに、TEP社はシカゴを本拠とするIHI Energy Storage社とのアリゾナ州の高温、乾燥した気候のもと電力 供給の信頼性を蓄電システムの効率的使用が如何に改善 全され得るかの2年間の研究・開発プロジェクトにも参加し ています。 NextEraシステムはNMC電池を使用しているが、それは通 常ニッケル、 マンガン及びコバルトの化成品を約3分の1ず つ含んでいます。これらの寿命は永く、オフピーク時の蓄電 のため末端のマイクログリッドとの接続性も優れています。 TEP社スポークスマンJoe Barrios氏が次のように述べまし た。 「会社として信頼性を増しながらこのような革新的技術 がいかに再生可能な資源の利用の拡大に資するかを研究 することをも可能にする、低コストの確立された蓄電システ ムを探しました。」TEP社の現在の再生可能資源を利用す るポートフォリオは、約530メガワットの能力を持つがこれ は年間11万を超える世帯の電力供給に十分なものでありま す。

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 FIAMM社ニッケルナトリウム電池(溶融塩電池)が蓄電システ ム用に選ばれた。

ケーススタディ − Siemens/FIAMM(溶融塩電池) 2012年にジェノバ大学のSavonaキャンパスは、エネルギー 供給及び管理につきより効率的方法を導入することを決定 しました。 「Energia 2020」プロジェクトの一環として、大学はマイク ログリッド技術をベースにしたIT技術によるエネルギー管 理システムの導入を決めました。 このシステムはキャンパス内の電力及び熱量の需要を地場 での発電によって賄い、外部からの売電量を減らすことに 役立っています。 目的は再生可能エネルギー源の使用を増やしてエネルギー 消費を極小化し、キャンパスからの二酸化炭素排出量、及 びエネルギーコストを下げることにありました。 再生可能エネルギーは集中的太陽光発電システム、及び光 電池施設により確保されています。マイクログリッドは2014 年に稼働し、Siemens社により設備が管理されています。 大 学 のM a n s u e t o R o s s i 博 士 が 説 明してくれました 。 「FIAMM溶融塩電池が蓄電システム用に選ばれたのは複 雑な冷却設備が不要なことからです。これは劣悪な環境に 対しても極めて抵抗力があり、日中に充電し、ピーク時に放 電するのに理想的であるからです。」

特集 9


活気ある産業における 電池のリサイクリング 世界の電池業界は需要増に直面する

将来への備え PHEV及び電気自動車が大きな市場を獲 得した暁には電池リサイクル産業へ多大 な影響を与えることになります。電池リサ イクル会社は現在これらの自動車から発 生するリチウムイオン電池を処理できるよ うに投資を行い、将来的により大型のリ サイクル設備の必要性が生じるのに備え ています。自動車用には使用が不可となっ た劣化した電池でも、電力会社の蓄電の 二次的な使用にはまだ適している可能性 があります。しかしいずれその電池の働き は不十分となり廃棄せざるを得なくなりま す。リサイクルは環境保護の理由から必要 であるが、さらに電池はリサイクル可能な 価値の高い素材を含むからです。電池の リサイクルにおける経済的誘因は、これら 電池の正極に使用されるリチウムの金属 酸化物の価値であります。それらはコバル ト、ニッケル、 マンガン、これらの複合物、 又はリンや鉄であります。銅、アルミ二ウ ム及び鋼も電池構造の一部をなします。電 池の特性は正極の素材により異なり多種 多様な化学品が使用されます。 リチウムイオン電池内の正極に使用される 重要な素材は、ニッケル・マンガン・コバ ルト(NMC)及びニッケルコバルトアルミ ニウム(NCA)であり、これらは33−88% のニッケル化合物を含みます。NMCは様 々な電子機器及び電気自動車に使用され ています。NCAはテスラ社自動車の18650 パナソニック電池に、また他の電気自動車 ではリチウムマンガン酸化物(LMO)との混

10 特集

合材として使用されています。更に正極の 重要な素材としてはLiCoO2, LiMn2O4 及びLiMPO4があります。 新しいリサイクル処理 正極の組成及びリサイクル処理方法によ り回収された電池素材の価値は異なりま す。今日あるリチウムイオン電池の大部分 は主としてコバルト酸化物の正極を含ん でおり、金属としてのコバルトの回収が処 理工程の経済性を決めます。現在多くの 自動車用として作られているコバルト品位 の低い電池は、現在の処理方法ではリサ イクルする魅力が劣ります。電池に再利用 が可能で、他の組成要素より高価値の正 極の活性素材(含まれているリチウムも含 み)を回収する新たなリサイクル処理工程 が現在開発中です。回収された素材の品 質は確保されねばなりません。 技術的進歩と並行的に法規制環境も変貌 を遂げ強化されています。欧州における電 池についての指令ではリサイクルを義務 付けているが、現在見直しが行われてい ます。中国においては、最近自動車メーカ ーに電池のリサイクルの責任を負わせる 規制を導入しました。現在、米国における 電池リサイクルについての統一的な規制 は無く、現行の規制は州単位となっていま す。世界的に更に多くの規制が制定される ものと予想されています。 収集システム上の問題から、使用済みリチ ウムイオン電池が収集され、最終的にリ サイクルされるのは10%程度しかないと推 測されます。この電池の大部分は携帯用 電子機器からのものです。 現在収集リサイクルされているその他の電 池はニッケル水素電池であり、ハイブリッ ド電気自動車(HEV)の23%ニッケル、4% コバルト、7%レアアース金属、36%鋼、 18%プラスチック、9%電解液、2%他金 属、及び1%ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)を含有する電池を含んでいます。ト ヨタプリウスは世界で突出して最も売れて いるHEVであり、トヨタは成熟した信頼性 の高い電池技術としてニッケル水素電池

に傾倒しています。過去5年世界のHEV販 売数は1.5−1.8百万台であり電池の寿 命が10年であることから、リサイクルする 必要のあるニッケル水素電池の数は増加 し続けます。 中国 世界のプラグインハイブリッド電気自動車 (PHEV)販売数は25万台に達し、中国は大 きなインセンティブがあることから最大の 市場(29%)となっています。このインセ ンティブにより、中国は電気自動車につい ても最大市場となっているのです。2016 年には50万台の電気自動車が販売され たが、そのうちの55%は中国においてでし た。業界予測では今後5年間販売数はさ らに増加し、電池リサイクル会社は今後数 十年に渡って益々多くのリチウムイオン電 池を処理することになることを示唆してい ます。

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リチウム電池部門では電気自動車の開発 に直設結びついた形で研究開発及び新規 生産設備への大型投資が行われていま す。これは主たる電池の化学的成分の変 化をもたらしました。ハイブリッド電気自 動車(HEV)は一般的にニッケル水素電池 (NiMH)を使用する一方、プラクインハイ ブリッド電気自動車(PHEV)および電池の 電気自動車(BEV)は、エネルギー密度が 高いことその他優れた性質があることか らリチウムイオン電池を使用しています。


大手リサイクル業者 WIKIMEDIA COMMONS

UMICORE 電池リサイクル社

 Umicore社のベルギー ホボーケンの貴金属施設。Umicore社は世界最

路電池リサイクルプロセスで受賞経験もある、ニッケル水素電池及びリチウムイオン電

年間7千トンの生産能力のあるホ ボーケンの超高温炉は、リチウムイ オン及びニッケル水素電池のリサイ クル処理の世界で有数の専用設備 です。

池の大手リサイクル業者です。独特の乾式製錬処理と最新式湿式製錬を結び付けるこ

7千トンの内訳

大手の貴金属リサイクル業者の一つ。

ベルギーを本拠地とするUmicore Battery Recycling (UBR)社は、廃棄物ゼロと閉鎖回

とにより、UBR社はあらゆるタイプ・形状のリチウムイオン及びニッケル水素電池を最適 な方法でリサイクルを可能としています。 Umicore社の乾式製錬工程では電池を三部分に分割します: • 高価値金属のコバルト、ニッケル、銅を含む合金 • 建築業界で使用されるスラグ。 リチウムイオン電池からのスラグはリチウム回収の可 能性を持つ。ニッケル水素電池からのスラグはレアアース(希土類)精鉱に加工され

± 250,000,000 携帯電話用電池 ± 2,000,000 電気自転車用電池 ± 35,000 電気自動車用電池

その後Solvay社の協力のもと更に精製 • 清浄空気、 これは独特の超高音(UHT)ガス清浄化工程での処理を経て煙突から放出 乾式製錬工程はUmicore社の超高温(UHT)技術を利用しています。 この超高温技術は

世界の電池販売

リサイクルの限界を引き揚げ、冶金リサイクル工程の「利用可能な最善技術(BAT)」の

2016年に世界の電池業界の売り上 げは650億米ドルであり1990年か ら2016年の間に年間平均5%の成長 を見ました。正極活物質の使用量は 2000年における6,900トンから2016 年には178,000トンに増大したが、 これも本業界の大幅な成長を反映す るものです。電池を使用する様々な 製品、例えば携帯用電子機器、携帯 電話、電気自転車、電動工具、電気 バスその他、への強い需要がこのよ うな展開の原動力となっています。 リチウムイオン電池の販売は数量ベ ースで2006年から2016年の間年間 22%伸びました。2016年―2025年 の間、Avicenne Energy社はリチウム イオン電池の販売を年平均13%増と 予測していています。

新たな基準となっています。 これは様々な複雑な金属系の廃棄物を大量に安全に処理 するよう設計されています。他のリサイクル技術と異なる点は: • 現行の他プロセスに比して回収率が高く、直接販売可能な製品を生産する • 電池の直接投入、 これにより危険を伴いがちな前処理を省くことが可能となる • ガス浄化システム、 これでは全ての有機化合物は完全に分解され、有害なダイオキシ ンや揮発性有機化合物の発生が無いことを確実にするものである。 フッ素は煤煙に 安全に確保される • エネルギー消費及び炭酸ガス発生を電池内にあるエネルギー源(電解液、 プラスチ ック及び金属) を使用する事で最小限に抑える • 廃棄物発生をほぼゼロにしている その後の湿式製錬工程で合金は更に精製され、金属は新たに充電式電池の生産用の 正極活物質に転換されます。 Umicore社は長期にわたり、携帯用電子機器やハイブリッド及び電気自動車に使用され る充電式電池の重要素材の供給者となってきました。

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特集 11


電池は坑内掘り鉱山の 空気質を高める

次世代ニッケルベース電池の技術及びその坑内掘り鉱山操業における将来性 現在、坑内掘り金属鉱山における総エ 環境にはるかに適した電池です。 ネルギーコストの約50%は換気が占め 現在使用されているものには3つのタイ ています。生産者は更に深部で操業しな プがあります: がら経済性を維持しようとしており、同 時にディーゼル粉塵を坑内の職場環境 • 鉛蓄電池 から除去する事を目指しています。これ • 溶融塩電池 らの目標と、クリーンエネルギー目標を • リチウムイオン:下位分類ではリン酸 鉄リチウム(LFP), チタン酸リチウム 達する必要性を結び付けると、坑内で (LTO) 及びリチウム ニッケル・マン の操業向けに設計された電池を動力源 ガン・コバルト(NMC)に分かれる とする車両の導入には、数多くの動機が あることは明確です。 それぞれ特定の使用法において強みと 「二方面から興味が示されています。」 弱みがあります。 と語るのは、電 池 原 動 の 掘 削リグ を 従来からの鉛蓄電池は、主に石炭、岩 最初に導入し自社 制 作した数 社の 一 塩及びポタッシュなど軟岩への適用とし つであるSandvik Mining and Rock て鉱山業に長い間使用されてきました。 Technology社の研究及び技術開発部 しかしながら幅広く使用されてきたこの 門PA Rock Drills and Technologies  電池も大型で重量があり、エネルギーと 役員のJani Vilenius氏です。彼はこう続 出力能力に限界があること、電池の循 けます。 「電池技術は他の産業では幅広 環寿命が短いこと、及び安全性につい く適用されてきており、それがために鉱 ての適格性に対する疑問などから使用 業における適応可能性が問われており、 に歯止めがかかってきました。 技術革新を推し進めている。」 多くの近代的電池技術はまだ試験段階 「他方で将来の鉱山操業の条件は今日 であるが、一方業界に既に受け入れられ より更に厳しいものになり、より環境に やさしい、より効率的な技術に対するニ 他ものもあり市場の関心も高まっていま ーズが生じています。近年電池生産は自 す。これらに含まれるものとして、様々な 動車及びグリーンエネルギー産業に備 リチウムイオン(Li-ion)素材や溶融塩電 え増産されてきた。鉱山業界はより良 池技術があります。リチウムイオン技術

には幾つかの異なる化学組成を持つも のがあり、鉱山業に最も適しているもの としてはチタン酸リチウム(LTO)、リン酸 鉄リチウム(LFP) 及びリチウムニッケル マンガンコバルト(NMC)があります。 Vilenius氏の説明です。 「充電時間の短 いLTO電池は積み込み及び運搬用に適 しているとみられる、というのも急速充 電の可能性や長期の循環寿命及び固有 の安全性を持つからです。溶融塩電池 も高い安全性及び高い容積あたりのエ ネルギー密度により稼働時間及び連続 性が十分あることからやはり鉱山業に 適しているとみられます。」 米 国の自社 製 作 会社 M a c L e a n Engineering社は、2015年にNMC電池 技術による「全車輌充電プログラム」を 立ち上げました。この試みは2016年に3 つの製品、2台の電池を動力とする坑内 のボルト機と、1台の電池を動力とする ブームトラックの完成に結びつきました。 M acL e a n社の製品部長 A nt hony Griffiths氏によると「我々が全車両の動 力として選んだ化学組成(NMC)は従来  MacLean Engineering社のEV BT3ブーム トラックはNMC電池技術を利用している

何が利用可能か? 鉱山操業にはある種の、又は特定の電 池が何十年にもわたり使用されてきま した。しかしながら化学及び直流モータ ーや充電技術など、それに関連する技術 の進歩に伴い、現在あるのは坑内掘り

12 注目される用途

STUART LISTER

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い空気質によって改善された職場環境、 及び新しい電池技術の適用により坑内 設備の生産性を上げる可能性があり、 新たな鉱業の要素となり得ることを認 識している」

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SANDVIK

For applications needing lower power and higher energy-capacity-per-volume, sodium nickel chemistry is used.

の鉛蓄電池と比べ総ライフサイクル(寿 命)及び充電サイクルを2倍、場合によっ ては3倍に伸ばしました。」との事です。

高出力用にはLTOが使用される。」

 Sandvik社のDD422iEボーリング機

Vilenius氏は更に高エネルギー能力電

がら、世界の全ての大手鉱山会社は電 池動力源の機械の使用を検討していま 来これに対する有望な解決策が無いこ す。何社かは大規模操業に電池使用の とを認めています。彼はこう続けました。 機材を配備するプロジェクトを推進して 「電池技術の選択は技術的、経済的要 おり、これはより広い市場に受け入れら 素が絡み、多様な答えがあり得る問題 れるのに役立つことになるでしょう。 池が引き続き望まれているが、近い将

Sandvik社は現在使用されている2つの 電池技術を持っています。Vilenius氏は 言います。 「様々な用途の要請に応えら れる単独の技術は無い。従って用途に より、技術を選択して行く必要がある。」 である。もし今あるいくつかの高エネル Artisan Vehicle Systemsの Mike 「しかしながら我々の選択に当たっての ギー電池技術を選択したとすると、安全 Kasaba氏は「鉱山会社幹部は業界とし 最重要基準は安全性である。出力は少 性といった好ましい特性が弱められる て坑内での使用機材がディーゼルから なく、容積あたり高エネルギーを要する であろう。」 ゼロ排出の機材に移行しつつあること 用途については溶融塩が使用される。 を承知している」と述べています。 「業 将来を展望すると 現在坑内掘り用の大部分の機材はディ 界全体にとっての転換点は近々発表さ  MacLean Engineering社のEV 975Omnia れる予定の大規模操業での成功例によ Bolterボルト機 ーゼルを動力源としています。しかしな り影響されます」 JAMES HODGINS, MINING INDUSTRIAL PHOTOGRAPHER

「我々は2020年までには坑内掘り操業 からの全ての提案依頼書(RFP)は、ゼロ 排出機材のみを要求し、残りのディー ゼル機材もその後まもなく廃棄されて 行くと見ています。」

本記事はMining Magazine2017年1 月―2月号に掲載されたCarly Leonida 氏の「坑内掘り操業を明日に向けて推 進する」と題する記事の要約である。

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注目される用途 13


陽が差さないとき

ニッケルが太陽エネルギー貯蔵コスト低減の促進剤に 陽が差さないときに備えて如何にして太陽エネルギーを貯蔵する か? 太陽エネルギーの貯蔵には、それを水素に変換すればよいと いうことが知られています。では問題点は何でしょう? 水素製造技 術の現状を概説すれば、研究室レベルでは期待が寄せられる成果を 見せています。しかしながらそれらは安定性を欠き、または費用が掛 かりすぎるため商業ベース、大量生産のためには更なる開発が必要 とみられています。

れている太陽電池を使って通常利用されているレアメタルを一切使 わずに従来品より安定性、効率的、コスト的に優れた装置を考案した ことです。 こちらの研究者が採用した開発手段は、安定した堅牢なシステムを 構築するということで、すでに業界内で効果のほどが確認されている 機器を種々組み合わせるというものです。

やり抜く水素 この試作品は所定の試験条件のもと既に100時間以上途切れる ことなく太陽エネルギーを水素に変換し続けています。従来例と 比較し、安定性、性能、寿命、省コスト性等々、すべての面で優れ ており、その方法は米国電気化学会の月刊査読誌「Journal of The Electrochemical Society」に掲載されています。

© INFINI LAB / 2016 EPF

朗報としては、スイス連邦工科大学ローザンヌ校およびSCEM社( ここでの試作品はつなぎ合わせた3個の新世代型の結晶シリコン太 スイスの時計産業、ヌーシャテル大学、スイス連邦政府、およびヌー 陽電池を、レアメタルには全く依存しない電解システムに接続させた シャテル州が1984年に設立した非営利の株式会社)が最近、市販さ ものです。 このプロセスの電気化学に関する部分がまさしく大幅なコスト減にな り、また容易に入手できる素材であるニッケル製の触媒なのです。

UNIVERSITY OF NEVADA

本論文の共著者Christophe Ballif氏によれば、 「スイスに設置され た12-14m2の装置は燃料電池自動車を10,000km以上走らせるのに 十分な水素を生成、貯蔵できる。これは性能面で言えば、結晶シリコ ン電池による、レアメタル使用しない水素生成の世界記録だ」とのこ とです。

地震に強い橋

ニッケル・チタンのスマート技術によって可能に 一般的にはニチノールと呼ばれている超弾 性ニッケルチタン合金(Ni:55%)のロッドを 芯金とした、柔軟性を持った曲がるコンク リート複合体が初めて米国シアトル市の中 心部で使われました。大きな地震が発生 したとき柔軟に曲がって倒れないばかり か、そのあともそのまま使用に耐える橋梁 が世界で初めての実際の適用として、シア トル市中心部を走る交通量の多い高速道 路の出口ランプの部分でそのデビューを 果たしました。

でも原型に戻っていました。

 シアトル市中心部を通る交通量の多い高 速道路に新設中の出口ランプの橋脚に採用さ れた2本の超耐震柱。この柱は強い地震の際 は揺れるように弾性を持ち曲がるように作ら れており、崩壊せずに継続使用に耐える

ネバダ大学レノ校の土木工学部の教授及 て、数件の200トン級の大型橋梁や、シン び研究員のSaiid Saiidi氏は、 「我々は形 グル橋脚や、コンクリート橋台等の作製、 状記憶金属ロッドと柔軟コンクリート複合 破壊を繰り返してきました。 体というこの新素材を我々の大規模振動 「(地震への)安全性の問題を解決した。 試験研究室で数件の模型橋梁で実験を 強い地震の後でも橋梁が使用可能な状態 行ってきました。この新技術が、地震活動 を保てる。これら技術と素材が超弾力構 が活発な交通量の多い基幹道路の橋梁 造新時代のさきがけとなるでしょう。」と に実地に適用されることは喜ばしいことで Saiidi氏は言っています。 す。」と述べました。 「これら新素材は被害 を大幅に減らしまた強い地震の後でも橋 本件所轄のワシントン州運輸局の構造技 師Tom Baker氏も、 「これは大躍進の可 このような接続橋は地震発生の際崩れ落 梁を閉鎖することなく対処できます。」 能性を秘めている。現在は崩壊しない設 ちることのないよう設計されているが、こ の新技術はその設計デザインを更にもう一 本技術の先駆者でもあるSaiidi氏は研究 計をしているが、将来的には無損傷という 段階改善させるものです。研究室の実験 室にてより安全で弾力性に優れる基盤施 ことで大地震の後でも緊急車両、さらには では、このニッケルチタン形状記憶合金の 設の探求ということで、多くのデザインの 商用車、一般車両の通行可能としてそれら 芯金ロッドと柔軟性のあるコンクリート複 組み合わせや、ニッケル・チタンロッドを 橋梁を封鎖せずに済むような設計が可能 合体は最大マグニチュード7.5の地震の後 はじめとする多くの革新的な素材を使っ となるでしょう。」と述べています。

14 NICKEL IN BRIEF

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あなたの生活に動力を

電池のおかげで我々は電気コンセントから解放され、よりシンプルな生活を送れるように なりましたが、現在市場に出回る多くの電池システムでニッケルは主要な役割を演じてい ます。 ただ電池本体の化学組成がどうあれ、ニッ ケルはスチールとの組み合わせで筒状の カバーとして内部電池を保護するという、 余り知られていない重要な役割を担ってい ます。電池のエネルギーを効果的に適時に 機器に伝えるためには、ニッケルメッキが 施されたスチール缶の形状がしっかりして いることが基本です。 筒状の缶の堅固なデザインは電池のセル の統一性を保証しています。充(放)電時 の体積膨張及び収縮は、強固なスチール が吸収してくれます。これら筒状のニッケル メッキが施されたスチール缶は使い捨て、 充電式、双方の電池に幅広く使われていま す。 鋼帯の表面全体に数ミクロンのニッケルメ ッキを施すことにより、接触抵抗をミニマ イズしています。タタ・スチール・メッキ社 が自社の最新鋭のメッキラインでこの技術 を完成させました。電気メッキの後、鋼帯

…ニッケルやニッケルメッキ スチールが多くのタイプの 電池の中でその性能や安 定性に貢献しているかを、 どれだけ誇張してもし過ぎ ることはない コイルに熱処理が施されます。この工程に より接触抵抗を減らし、次の高速製缶工程 での付着力強化につながっています。電気 特性とは別に、ニッケルは電池内部のアル カリに対して優れた防食性を発揮します。 これは電池の寿命期間中、その構造に圧 力を加え続けるガス発生の可能性を制限 します。 缶は高速精密スタンピングプレス機を使 用し、数多くの絞り工程を経て、鋼帯を変 形させて製造されます。缶はそこから世界 中の電池メーカーに出荷されるのです。  熱処理後の鋼帯(下)の上面にめっきされ

TATA STEEL

たニッケル層(上)とその中間の微粒子拡 散層(中)

 最新式ニッケルメッキライン

このようにニッケルには、深絞り時や電池 性能向上に資することに加え、電池組み立 て加工時の溶接性も向上させるという利点 もあります。 タタ・スチール・メッキ社の営業刷新担当 重役のMarcel Onink氏は、 「電池の働きは その存在を含め日常的なものとして行き渡 っているが、その中でニッケルやニッケルメ ッキスチールが多くのタイプの電池の中で その性能や安定性に貢献しているかを、ど れだけ誇張してもし過ぎることはないでし ょう。」と言っています。 「現在多くはアル カリ電池向けとなっている。しかし将来は この絶妙の組み合わせ(ニッケル=スチー ル)は電気自動車市場拡大と歩調を合わ せその分野でも欠かせないものとなること が期待されている。電池の最終的化学組 成がどの様な形のものであれ、そのパッケ ージには実証済のニッケルメッキを施した スチールとなることは間違いないと考えら れる。」

オンライン版ニッケル誌

www.nickelinstitute.org ニッケル誌の無料購読とウェブサイト掲載 のお知らせを希望する場合: www.nickel institute.org/NickelMagazine/Subscription ニッケル誌を7ヶ国語(英語、中国語、 日本 語、 ロシア語、 フランス語、 ドイツ語、 スペイン 語) でウェブサイトに掲載 www.nickelinstitute.org/NickelMagazine/ MagazineHome ニッケル誌のバックナンバーの検索:2002年 7月号以降のニッケル誌を掲載 (英語版のみ) www.nickelinstitute.org/en/Nickel Magazine/MagazineHome/AllArchives 携帯 あなたの Apple® もしくはAndroid™ の携帯にNickel Magazineのアプリをダウン ロードして下さい Twitterでフォローして下さい @NickelInstitute LinkedInでつながって下さい ‒ ニッケル協会のページをご覧下さい。

TATA STEEL

ニッケル協会 YouTubeチャンネル でニッケル関連のビデオが見られます www.youtube.com/user/NickelInstitute

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注目される用途 15

TATA STEEL

電池でニッケルと スチールが シナジー効果


どのようにして電気自動車で走行距離320キロ、ゼロ発進加 速度時速100キロまで7秒弱、30分の充電で145キロの走行 距離を出せるでしょうか?答えはニッケル含有量の高いリチ ウムイオン電池を使用することです! 電気自動車ボルト(ボルトEV)の動力供給を行っているのは 車両の前座席の足元スペースから後部座席の後ろまで敷き詰 めてある、新しく設計された60kWhのリチウム電池なのです。

この電池設計と化学組成からは 最大160キロワットのパワーと 60 kWhのエネルギーが 同時に得られる

この高ニッケルリチウムイオン化学物質は、他の化学組成の 電池より発熱時の動作性能に優れているため、より小型の能 動冷却システムの設置で済み、より効率的な搭載が可能とな ります。この化学組成(の電池)により、ボルトEVはどのよう な気候にも、またどのような運転者の要求にも対応して高性 電池は床下に「横置きスタイル」にて敷き詰めるような配列を 能を発揮することとなります。 可能とするパッケージングとなっており、その面積はたった高 さ100mm、 幅338mmとなっています。この控えめともいえる 改善されたパワーとエネルギー 電池デザインのお陰で、 車体構造チームは車内空間を最大化 ボルトEV電池パック技術グループ部長のGregory Smith氏 できるようになりました。 は、 「通常、電池はエネルギー又はパワーのどちらかがを望ま しいレベルまで出力するが、同時に両方というのは従来なか シボレー・ボルトEVの技師長、Josh Tavelは言っています。 った。しかしこの電池設計と化学組成からは、最大160キロワ 「走行距離数や価格レベルでリーダー的存在になっても、運 ットのパワーと60 kWhのエネルギーが同時に得られる。」と 転席に座った人がその都度ワクワクするような自動車でなけ れば何の意味もない。」 言っています。

HTTP://A.CHEVROLET.COM

電気自動車搭載電池の 性能をさらにアップさせた ユニークな化学組成

電池は「横置きスタイル」にて配列され、 その面積はたった高さ100mm、 幅338mmとなっている。


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